砂礫混合海浜の安定性を適切に評価あるいは向上させることは,海岸の保全に資するばかりでなく,複数の粒径土砂の相互作用が海浜地形に及ぼす効果を解明する学術的にも重要かつ興味深い課題である.本研究では海岸の礫に非接触で個体識別が可能なRFID (Radio Frequency Identification)タグを埋め込み,個々の粒子レベルで長期間移動経路を追跡することにより,複雑な混合土砂の挙動を正確に把握するとともに,現象の解明をすすめるものである.本年度は,RFIDを現地海浜より採取した礫に埋め込み,アンテナによる探知性能について室内試験によりその探知能力を測るとともに,現地海浜にタグ礫を投入し,1ヶ月間,計7回に渡り,礫の移動を追跡した.その結果,RFIDを用いた追跡では,礫の探知効率が目視探査に比べて約4倍となり,大幅に調査効率が向上した.同時に実施した.高精度GPSによる海浜断面地形測量結果と波浪観測情報を合わせ,堀川ら(1975)によって提案された海浜断面形態に関する無次元パラメーターをもとに観測結果を整理した.その結果,現地砂礫混合海浜では,均一粒径の結果に基づく既往研究の結果と全く異なる土砂移動の傾向があきらかになった.これは,高波浪時と低波浪時で動きうる土砂の粒径分布が変化するために,地形変動を代表する粒径がたとえ同じ海浜であっても,波浪条件によって変化するためであることを示していると考えられる.このように本研究ではRFIDを海浜の土砂移動追跡という新しい分野に導入し,土砂追跡効率を大幅に向上させることに成功するとともに,追跡された移動経路から混合土砂海浜の安定性に関する新しい知見を得た.さらにこれらの成果をOcean Science Meeting 2014等で発表した.
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