都市キャノピーや植生キャノピーといった複雑形状を有する障害物を過ぎる流れの実用的な数値予測には、障害物が流れに及ぼす影響をマクロに表現するキャノピーモデルの導入が欠かせない。他方でキャノピーモデルの重要なパラメータである抗力係数の設定に普遍的・汎用的な方法は未だ見出されていない。今年度は障害物模型である円柱群を過ぎる流れの数値シミュレーションを円柱配置パターンや密集度を系統的に変化させて実施し、特に円柱群領域内での抗力係数の空間分布特性、およびそれを考慮することでキャノピーモデルによる流れの再現性が改善できるかどうかについて検討を行った。埋め込み境界(IB)法に基づく流体ソルバーを新たに開発し、円柱群内部の個々の円柱要素周りの複雑な流れを高精度に再現した。 円柱群を過ぎる一様流れでは、50本の円柱の配置パターンと密集度を系統的に変化させ、円柱群全体が受ける抗力特性に注目した。密集度が高まると円柱群全体が受ける抗力が低下し、また配置パターンの影響が弱まる傾向が確認された。さらにIB法の結果を用いて古典的なキャノピーモデルの精度検証を行った。円柱群内での抗力係数の分布を考慮することで障害物前縁でのよどみ現象の再現性は高まるものの、それによって流れ場全体の再現性はさほど改善されないことを見出した。円柱群内の個々の円柱に対する接近流速を個別に評価することでローカルな抗力係数を算出し、それらをキャノピーモデルに反映することも検討した。ローカルな抗力係数は接近流速が非常に遅い場合にかなり大きな値をとる場合があり、その結果過剰な抵抗源となり得ることも認められた。
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