研究課題/領域番号 |
23760458
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山上 路生 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80362458)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 植生乱流 / 開水路流れ / ガス交換 / PIV計測 / LIF計測 |
研究概要 |
植生生態は酸素,二酸化炭素,窒素などの溶存ガス物質と密接な関わりをもっており,これらのガスは自由水面を通じて常時大気と交換されている.このような背景から植生開水路流れのガス輸送特性の解明は河川環境の最適管理や水域環境の保全などの実務においても重要なテーマだと確信した.さらに植生開水路研究で培った乱流計測技術を用いれば,誰もトライしていない,「植生開水路エコフローにおける組織乱流構造と水・空気界面におけるガス交換輸送への寄与特性」の実験的解明ができないかと思いついた.そもそもこのテーマに関する研究の遅れの原因としては,組織乱流渦の研究が自由水面の影響を考慮しない壁面境界層や乱流混合層を中心に発展してきたことが挙げられる.すなわち自由水面のガス交換現象と植生乱流の組織構造については別々に発展しており,2つをジョイントする研究はほとんど皆無である.そこで本研究ではこの状況をブレークスルーするために,申請者のこれまでの経験と実績に基づいて,植生開水路流れの組織乱流渦の生成・発達メカニズム,それらの自由水面領域での挙動特性および界面ガス交換/溶存ガス輸送に与える影響をターゲットとし,これらを高精度計測システムを駆使して実験的に解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植生乱流およびガス交換に関するそれぞれの論文を水工学論文集に掲載した。学会でも口頭発表を行い、有意義な意見交換ができた。そこで、種々の問題点が整理できて次段階への礎を築けたと断言できる。また植生乱流におけるガス交換実験(この解明が本プロジェクトの主目的である)についても予定通り行い、植生によって誘引される乱れがガス交換を促進するという極めて興味深い知見を得た。土木学会論文集および国際論文集に投稿するために、この成果を整理中である。したがって、予定どおり研究は実行されていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記のトピックスに注目して研究を推進する。(キャノピーせん断渦によるガス濃度の乱流輸送ダイナミクスの解明)境界層と異なる混合層型の大規模せん断渦が自由水面の乱流構造に及ぼす影響を調べる.特に水面とキャノピーの二重界面のガス交換特性に注目する.さらに植生密度や配置を系統的に変化させて,これらによる界面ガス交換速度への影響を検討するとともに組織乱流渦による輸送機構の物理モデルを提案する. (ガス濃度輸送プロセスへの藻波運動および乱れ成分の寄与特性の解明) 実際の植生は揺動し周期的な藻波運動が観察される.そのような場合,流速場と同様にガス濃度輸送も藻波運動の位相に大きく依存するものと思われる.位相解析を濃度変動データにも適用して,流速の位相変動特性との比較を行う.これによって剛体植生とのガス輸送特性の差異に関する理解が深まると考えている.これらの一連の研究により,植生開水路エコフローにおける組織乱流渦と炭酸ガスの輸送プロセスが明らかにされ,この時間的な発達変化をアニメーションできるから,瞬間的なバースティングによるガスの移流拡散輸送メカニズムを解く鍵が得られるものと期待される.また植生パラメータを考慮した河川植生水域におけるガス交換式も提案できる.これらの成果が得られれば,実河川における植生管理の在り方の方向性を整理する足がかりとなり,水理水工学へ大きく貢献できるものと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で新規開発するPIV・LIFシステムでは通常の可視化計測装置と比べて,高解像度で高い濃度階調をもつ撮影装置が必要である.そこで他のハードウェアとの同期特性や今後の拡張性も考慮して同期制御可能な10ビット高速度・高感度カメラを設備備品として計上申請する.さらに特注のフィルタ回転装置によってPIVとLIF撮影の切り替えを自動で行う.この装置は上田メカニック研究所に特注予定であるが,これも合わせて設備備品として申請する.
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