植生開水路流れの乱流構造や物質輸送については,計測手法や計算技術の発展とともにその解明が進んでいるが,一方で自由水面における乱流輸送プロセスやガス交換特性の解明にはほとんど手がつけられていない状態である.河川における溶存酸素や炭酸ガスの分布特性は水域植生群の生育に大きく関わるとともに大気ガス循環とも密接するから,この解明は水域生態系の維持問題からグローバルな温暖化素過程まで幅広い環境トピックスにおいて急務である.そこで本研究では室内乱流実験によって,植生エコフローにおけるせん断組織渦が自由水面乱流を誘起するメカニズムや水空気およびキャノピーの二重界面におけるガス交換輸送プロセスを詳細に解明する.最終的に植生粗度効果を考慮した界面ガス交換速度の新しい物理モデルを提案する.なお、具体的な成果は次のとおりである。1) 水平面PIV計測によって界面流速発散値の瞬間値を得た.瞬間構造の中には正負のパターンが時間とともに流下する様子が観察され,ボイル現象と類似の特性が確認できた.2) 滑面流れでは界面流速発散値は水深の影響はほとんどないが,水面の主流速には大きく依存することがわかった.また植生流れでは植生先端のレイノルズ応力値に対応して発散強度が増減することが明らかになった.このことは植生せん断層で形成される大規模渦が水面の乱れに大きな影響を与えることを意味する.3) 従来のSDモデルでは比例定数が水深依存することがわかった.そこで水深効果を導入した修正SDモデルを開発した.速度スケールには水面流速と水面乱れエネルギーを与えたが,両者ともに比例定数は水深や流速への依存性はみられず有用なモデルであることが示された.
|