川内川鶴田ダム集水域の浮遊砂輸送量を把握するための現地観測を行った.本研究では,加久藤盆地下流の吉松橋,大口盆地南部の荒田天神橋,川内川・羽月川合流部下流側の下殿橋,ならびに大口盆地北部を流れる支川の堂崎橋,新高津原橋の5測点を対象とした.2011年10月~2012年9月に採水を行い,懸濁物(SS)濃度と粒度分布を測定した.その結果,平常時のSS濃度は,大口盆地南部で他の測点と比較して低く,支川の白木川で高いことが確認された. 観測で得られたQ-Qs式を利用して年間の総SS輸送量を求め,鶴田ダム集水域の浮遊砂生産特性を検討した.その結果,羽月川(大口盆地北部)からの総SS輸送量は川内川本川(加久藤盆地・大口盆地南部)と同程度であることが確認された.一方,比SS輸送量の比較からは,大口盆地北部の土砂生産能が,加久藤盆・大口盆地南部と比べて2倍程度高いことが示された. さらに,川内川最上流部の加久藤盆地に着目し,蛍光X線分析装置を用いた土壌の原位置元素組成調査を実施した.その結果,土壌中の元素組成に基づく小流域スケールでの地域区分の可能性が示された.元素組成調査結果(地球化学図)を活用した土砂発生源推定や地質・土地利用毎の土砂生産能評価に関しては,精度検証を含めて今後も調査を継続する予定である.
|