研究課題/領域番号 |
23760467
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
鈴木 善晴 法政大学, デザイン工学部, 准教授 (80344901)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 集中豪雨 / 気象制御 / シーディング / 地球温暖化 / メソ気象モデル / 雲解像モデル |
研究概要 |
近年,局地的集中豪雨の多発や水資源の偏在化による旱魃など,地球温暖化に起因すると思われる異常気象災害が地球規模で頻発している.我が国においても,都市域を中心に,局地性が極めて強い短時間豪雨(いわゆるゲリラ豪雨)による人的・経済的被害が多発しており,近年の温暖化傾向が継続・進展した場合には,従来の安全基準で整備された都市社会システムにおいて豪雨による被害がさらに拡大するであろうことは容易に想像される. そこで本研究では,メソ気象モデルによる数値実験をベースに,クラウド・シーディングを用いた人為的豪雨抑制手法の開発とその効果的な実施条件についての検討を行う.線状対流系や都市型豪雨などの局地性の強い降水システムを対象として,特定地域への降水の集中を緩和・抑制するためには,どのようなタイミングで,どの場所に,どの程度の規模のシーディングを実施すればよいのかについて感度分析の観点から検討するとともに,豪雨抑制効果が得られた場合の物理的なメカニズムについて調査・解析を行った. その結果,実施条件や対象とする豪雨事例によっては,シーディングにより領域平均降水量や領域最大降水量が減少し降水抑制の効果が得られるケースが少なくないことが確認された.感度分析の結果からは,積算降水量が多い地点を含む領域の高高度にシーディングを行った場合に領域最大降水量が減少傾向を示すことなど,抑制効果が得られやすいシーディング条件について一定の知見を得ることができた.シーディングにより豪雨が抑制されたケースでは,積雲の分布位置が風下側へと移動する傾向が確認され,このような降水粒子の風下方向への移動・拡散が豪雨抑制の一つの要因ではないかと考えられる.今後も引き続き,様々な豪雨事例を対象としてシーディングの最適な実施条件について調査・検討を行うとともに,複数のモデルを用いた結果の信頼性の検証に取り組む予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度(平成23年度)は主に,本研究の核となる以下の2つの課題に取り組み,それぞれ下記の成果を得ることができた.進捗状況はおおむね計画通りであるが,これまでに得られた成果に対して複数の異なるモデルを使用した信頼性の検証を実施することが当面の課題である.(1)「豪雨抑制に適したシーディング実施条件に関する感度実験」:積算降水量が多い地点を含む領域の高高度にシーディングを行った場合に領域最大降水量が減少傾向を示すことなど,抑制効果が得られやすいシーディング実施条件について一定の知見を得ることができた.(2)「シーディングによる豪雨抑制効果に関するメカニズム解析」:シーディングにより豪雨が抑制されたケースでは,積雲の分布位置が風下側へと移動する傾向が確認され,このような降水粒子の風下方向への移動・拡散が豪雨抑制の一つの要因ではないかと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成24年度)は,今年度の2課題を継続しながらまずは複数のモデルを用いた結果の信頼性の検証に取り組む予定である.異なるモデルを使用したシーディングのシミュレーションにおいてもこれまでに得られた結果と同様な傾向を示すのかどうか,また,どのような実施条件のときにモデルによる結果の差異が大きくなるのか,などについて検討を行うことで,結果の確からしさ(信頼性)を定量化することが可能となる. また,次年度からは,新たに「次世代型降雨レーダを用いた局地的豪雨のメカニズム解析」と「温暖化進行時の大気状態における豪雨抑制効果に関する数値実験」の2つの課題に取り組むことで,豪雨抑制手法の実用性・信頼性の向上を図る.さらに,抑制効果の事後検証や事前のリスク評価など,実際にシーディングを実行する際の技術的な課題に関しても調査・検討を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では,様々な条件下における数多くの数値シミュレーションを繰り返し実行する必要があるため,今年度(平成23年度)の経費で導入した最新型ワークステーション1台に加えて,新たに中古の高速ワークステーション2台と膨大な計算結果を格納するためのハードディスクを多数購入して,本研究の遂行に必要な最低限の計算機環境を整える. さらに,次年度に新規導入を予定している雲解像モデルは,これまで使用してきたモデルよりもシミュレーションの際の計算負荷が非常に大きく,ワークステーションの新規購入分を加えたとしても他の課題との同時進行が困難となる可能性があるため,京都大学が所有する大型並列計算機の共同利用申請を検討する. また,次年度は,研究協力者として修士1年の大学院生3名に研究補助を依頼するため,観測を実施する際の補助およびデータ解析補助に対する謝金を若干多く計上する予定である.
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