研究課題/領域番号 |
23760468
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
花崎 直太 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (50442710)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 水資源モデリング |
研究概要 |
全球水資源モデルH08に気象データを与えてシミュレーションを行うと、世界の河川流量や水利用量を空間解像度0.5°×0.5°、1日単位で推定することができる。本研究ではH08に気象予報データを与えてリアルタイムシミュレーションを行い、推定された土壌水分量、積雪水量、貯水池貯水量などの状態量の平年からのずれに関する情報を用いて、世界で起きている旱魃・洪水をリアルタイムに捉えるとともに、これから発生するリスクを検出することを目的とする。 平成23年度はH08が過去の世界の旱魃・洪水イベントを捉えられるかを明らかにするため、H08の陸面と河川のサブモデルを使って、1961~1990年の30年間の計算を行った。今回は旱魃と洪水の最も基本的な指標である河川流量にのみ着目した。集水面積が200,000km2以上、観測流量のある期間が20年以上入手可能な43の観測地点の計算結果を利用して検証を行った。 年流量に関してみると、半数以上の28の流量観測地点において相関係数(CC)が0.7を上回ることが分かった。これは計算値の年々変動をもたらす、降水量などの入力気象データの精度が高かったことを示していると考えられた。次に高水期流量に関してみてみると、年流量よりは劣るものの、比較的年々変動の再現性が高いことが分かった。高水期流量のCCは年流量のそれらと連動しているのが原因と考えられた。最後に、低水期流量に関して見てみると、年流量・高水期流量よりCCはかなり小さくなった。特に9つの流域においては相関係数が負の値になった。 ここで得られた知見は、平成24年度にリアルタイムシミュレーションシステムを構築する際、特に閾値などの設定などにおいて、重要な基礎情報となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画に沿って研究を進めている。最初に取り組む予定であった河川流量の分析は、分析のためのプログラム開発が完了し、途中成果を予定通り水文・水資源学会で発表することができた。土壌水分と農業収量について計算は完了したものの、分析が未完である。ただし、著しい遅れではないと考えている。別のプロジェクトと連動する形で、追加的に2011年のタイの洪水に関する詳細な計算と分析を行い、多大な成果を得ることができた。こちらについては、共著者と学会発表をまとめているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度はおおむね順調に研究が進んだため、平成24年度も当初の手順に沿って、引き続き研究を進める予定である。現在のモデルと入力データの信頼性の関係から、10~30年に一度の洪水イベントは検出できるものの、それ以下の規模になると検出できないのではないかと申請時に予想していたが、平成23年度にはだいたいそのような結果が得られた。研究計画に関して、大きな変更は必要ないと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ処理の補助を依頼するため、アルバイトを週2回(1回5時間)雇用する必要がある。このアルバイト謝金が60万円前後(次年度の研究費総額の約6~7割)になる見込みである。この他、データ保管のためのハードディスクの購入や、平成23年度に購入したサーバの機能増強のためのメモリの追加購入などに予算を執行する予定である。
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