研究課題/領域番号 |
23760476
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松行 美帆子 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (90398909)
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キーワード | 国際情報交換 / タイ / バンコク / 軌道系公共交通 / コンドミニアム / スプロール / 交通行動 |
研究概要 |
24年度は、バンコクにおいて軌道系公共交通機関であるBTSとMRT(地下鉄)開通後に、沿線でコンドミニアム建設がブームになっていることに着目をして、新規に開発された沿線コンドミニアムの住民にアンケート調査を行い、これらコンドミニアムの建設により、住宅系の土地利用にどのような影響があったのか、また人々の交通行動にどのような影響があったのかについての検証を行った。 約230件のアンケート調査を行い、その結果として、下記のような知見が得られた。沿線コンドミニアム居住者である回答者の属性としては、中間層の比較的若い世代が多い。かれらの引っ越しの理由で最も多い理由は、職場の位置の移動であり、実際に郊外から都市中心部への職場の位置の移動が見られた。回答者の内、約1/3がもともと都市中心部に居住していたが、残りの約2/3は中心部と郊外部の間、もしくは郊外部から引っ越してきており、沿線コンドミニアム開発が、都市の住宅用地の郊外化に歯止めをかけることにある程度の貢献をしていることがわかる。また、交通行動の変化に関しては、とくに郊外から引っ越してきた住民に、自動車から公共交通へのモードの転換が多く見られた。 結論としては、鉄道駅の近くのコンドミニアムに住み、公共交通を利用して狭い範囲を移動して暮らすという新しいライフスタイルが、若い中間層を中心に広がっていると言えよう。 今後、これら若い世代をさらに都心に居住してもらうこと、すでに都心に居住している若い世代が郊外に引っ越さないような施策が必要であり、そのためには職場を都心に引きつけることが一つの策であると言えよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では、24年度においては、平成23年度の調査で特定された都市中間層向けの新規開発居住地のうち、その位置や交通特性より数カ所を選定し、その住民に対して、交通行動(通勤・通学・買い物の交通モード、以前の住宅での通勤・通学・買い物の交通モード)、居住地選好(以前の住宅の位置、現在の住宅の選択理由)に関するアンケート調査を行うことが計画されていた。 24年度は、軌道系公共交通機関沿線のコンドミニアムの居住者へのアンケートを行い、交通行動の変化と居住地の変化を聞いており、結果として、コンドミニアム開発の都市構造への影響についての新たな知見を得ることが出来た。 以上より、交付申請書通り、おおむね順調に研究は進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の研究により、軌道系公共交通機関沿線への引っ越しの動機として、職場の位置の変化が明らかになった。そこで、軌道系公共交通機関の土地利用への影響を明らかにするため、職場、とくに中間層の職場であるオフィスの立地が、軌道系公共交通機関の影響でどのように変化していっているのかについて、検証を行う。 また、軌道系公共交通機関が整備されつつあるにもかかわらず、いまだ郊外部における中間層向けの住宅開発はとどまらず、都市のスプロールが進んでいる。そこで、郊外部に居住する中間層のその理由およびその交通行動を明らかにすることにより、現在形成されつつある都市構造が持続可能なものかいなかについて検討を行い、より持続可能な都市構造にするにはどのようにすべきかについて考察を行う。 最終的には、それぞれの研究結果をまとめ、軌道系公共交通機関を導入する際に、どのような施策を行えば、より都市が持続可能なものになるかについて提言を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、8月末より3月末日まで、産前後休暇、育児休暇を取得したため、残額が生じた。現在、1年間の補助事業期間の延長を申請中である。 25年度は、主に中間層の職場であるオフィスの立地が、軌道系公共交通機関の影響によりどのように変化しているかについて調査、検証を行う。具体的には、不動産関係者へのインタビュー、不動産データの取得、分析、各オフィスへのアンケートなどを行う。 また、24年度に行った調査結果の国際学会での発表も合わせて行う。
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