「国民の観光に関する動向調査」,「旅行者動向調査」,「旅行・観光消費動向調査」,「社会生活基本調査」,「国勢調査」のデータを用い,それら比較することにより,各統計の特性を明らかにした.各統計は母集団特性,調査方法,調査規模の影響によりサンプルの性年齢階層や地域別抽出率に母集団との乖離が存在し,同じ項目でも結果に不整合があることを明示した.結果の活用に関しては,性年齢階層,地域等での補正処理や,統計の特性を考慮した解釈が必要であることを示唆した.また,その特性を踏まえた国内宿泊観光行動の時系列分析を行い,若者の旅行離れの原因を,様々な統計調査の結果から明らかにし,さらには,温泉浴の今後の動向等も明らかにした.「全国幹線旅客純流動調査」のデータを用いた,都市間交通統計と観光統計との比較からは,手段別,性別では乖離があるものの,総量や居住地別目的地のオーダーは等しいことを確認した.都市間交通統計は交通需要を精度高く把握できるが平休1日値と拡大した年間値のみのデータとなる.一方の観光統計は季節変動はあるものの都市間交通統計と比べると精度が低い.そのため,純流動の年間値に観光統計で得られた月別の需要変動,居住地別目的地の構成比を組み合わせると,より精度の高い観光データとなる可能性があることを示した.これらの知見を,学術論文として取りまとめた.
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