研究課題/領域番号 |
23760494
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
西内 裕晶 日本大学, 理工学部, 助教 (40548096)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 国際研究者交流(香港(予定)) |
研究概要 |
平成23年度の研究実績は,交通管制官の経験則を生かした交通現象診断モデルの構築のために必要となる情報の収集と整理を行い,平成24年度に実施するモデル構築のための基礎的な知見を整理した.具体的には,交通管制官へのヒアリング調査を中心に,研究対象である首都高速道路ならびに高速道路の動的な交通管理方策の先進国である欧州の交通管理者・交通管制官へのヒアリングを通じて,交通管制官の経験則や意思決定プロセスについて整理した.また,モデル構築のためのデータ,ソフトウェアの準備を行った. 特に,欧州(オランダ(National Traffic Control Center),イングランド(Highway Agency),スペイン(Catalan Traffic Service))では,わが国ではまだ実施されていない交通混雑時における路肩の解放や速度規制の動的な制御手法が既に実装されており,その視察を行った.また,交通管制官らへのヒアリングを通じて,密に設置された車両感知器から得られる速度データの利用方法と自動化された交通管理方策の実施手順に関して情報収集を行い,本研究で構築を目指す交通現象診断モデルの入出力をどうのように設定方法について,基礎的な知見を得ることができた. また,首都高速道路においても,交通管制官より,交通管制官の育成方法から実際の業務までの概略ならびに意思決定プロセスの概略を紹介いただいた.今後,発生する自称ごとに意思決定プロセスを整理し,交通現象診断モデルの骨格を作成する必要がある. 上記に加えて,首都高速道路における速度データと事故を含む突発事象のデータの整理を行い,交通現象診断モデルの構築時に適用するベイジアンネットワークのソフトウェアの実装を行った.また,本モデルの適用を行うための交通流シミュレーションの構築の準備も行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は研究計画書通り順調に進んでいると判断できる.平成23年度では,1(蓄積データの整理),2(首都高速道路交通管制官・道路管理者へのヒアリング調査),3(交通現象診断モデルの構築)であり,1は既に研究協力者である割田博博士(首都高速道路勤務)の協力により,車両感知器の速度データならびに事故を含む突発事象の履歴データを提供いただいている.2についても,首都高速道路の交通管制官とのヒアリング調査を実施し,それに加えて,交通管理方策の先進国である欧州三国の交通管制官とのヒアリング調査を通じ,作成すべきモデルの構造を決定するための基礎的な情報収集を行った.なお,首都高速道路の交通管制官とは今後もヒアリング調査を継続することで協力体制を確認している.また,3については,ソフトウェアの利用準備を行い,データの収集も完了していることから,実際にモデルの構築に向けた準備を進めている.ただし,モデルの構造は,交通管制官の日々の業務の流れと密接に関連することから,前述した通り,2に関連するヒアリング調査を継続して実施し,より精緻なモデルを構築するための議論を研究協力者である割田博博士とも進めている状況である.なお,モデル構築を決定する議論は,平成24年度の研究計画にも盛り込まれており,議論を引き続き行いながら,今後,交通現象診断モデルの構築を進めていく. よって,既に実装済みデータ等を用いて,平成24年度ではモデルの構築の完了ならびにその適用を行う流れとなっており,研究の達成度は(2)概ね順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度では,交通現象診断モデルを構築・決定し,得られたモデルを用いて,突発事象発生時の交通現象の解析ならびに欧州で行われているような動的な交通管制手法の検討と交通流に与える評価を行う予定である. まず,交通現象診断モデルの構築では,突発事象発生後に交通渋滞がどの程度発生するのか,旅行時間がどの程度変化するのかを確認する.また,交通状況に異常が発生した場合に,ベイジアンネットワークの特性を生かしてその原因を推定する.そこらから得られる予測結果ならびに推定結果から,モデルの再現性を確認する.それにより,本研究で提案する交通現象診断モデルの再現性を検証しながら,モデル構造の決定をするものとする. 研究計画書内5(交通現象診断モデルを用いた交通現象解析)では,以下の視点で分析を行う.1)突発事象発生時の交通状況について整理を行う.2)突発事象発生時からの交通現象(交通量,旅行時間,渋滞量)がどのように変化するかを整理する.3)どのような交通状況下においてどのような事故や事象がどの程度の影響を交通状況に与えるか.これらの知見を構築した交通現象診断モデルを用いて整理をする.それと同時に,6(交通現象診断モデルを用いた動的交通管制手法の検討と評価)では,突発事象が発生しやすい状況をモデルが検知し,その現場に対して動的な交通施策を実施した場合の効果を評価する予定である.現段階では,交通診断モデルと交通流シミュレーションを組み合わせることにより,各種施策を実施した際の交通状況を再現し突発事象発生リスクの評価を想定している.なお,これらの評価においては,海外の研究者らと共に議論を進めることも想定している. 以上の結果を踏まえて,平成24年度では,研究計画書内7(研究全体のとりまとめ)において,2年間の研究成果をとりまとめる.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,既に購入した平成23年度の物品を利用しながら,交通現象診断モデルを構築する.また,構築したモデルは交通流シミュレーションによりその効果を評価する予定である.よって,交通流シミュレーションにて首都高速道路の一部を再現する予定であるが,その構築には,膨大なデータコーディング作業等である.よって,その作業は日本大学理工学部の卒業研究生や大学院生から協力を頂きながら行う予定である.それにより,謝金等の人件費や状況によっては業者への委託費用が必要となってくる. また,研究計画書内6(交通現象診断モデルを用いた動的交通管制手法の検討と評価)を海外の研究者らと共に議論を深める予定であるが,必要に応じて,研究者(予定では,香港理工大学Agachai Sumalee助教授)を招へいするための費用を本研究費により捻出することを想定している. 上記以外では,研究計画書に示した通り,研究成果を発表するための論文投稿料ならびに学会発表のための出張旅費,研究の進捗に応じて必要となるUSBメモリ,交通情報に関する研究関連消耗図書,データベース保存用HDD,論文別刷等の費用として,本研究費を使用する予定である.
|