研究課題/領域番号 |
23760495
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研究機関 | (財)運輸政策研究機構運輸政策研究所 |
研究代表者 |
平田 輝満 (財)運輸政策研究機構運輸政策研究所, その他部局等, 研究員 (80450766)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 航空管制 / 航空交通流管理 / 出発制御 / 遅延 |
研究概要 |
本年度では,航空交通流管理(ATFM)に関して,欧米の最新事情を調査を行うとともに,主に我が国の航空交通流の特性分析として,国内線の最大のハブとなっている羽田空港の年間の実際の運航データから,羽田到着機の遅延や出発制御の実態について基礎的な分析を行った.具体的には,遅延の時間変動や季節変動について気象条件の面などから分析を行い,また路線間比較からその差異を確認した.出発制御発出についても同様の分析を行い,細かい時間帯別の発着機数の偏りや気象条件の変化に伴う滑走路運用(滑走路処理容量)の影響に関して明らかにした.さらに出発制御機の空中待機時間(飛行遅れ時間)を便別に推計し,出発制御の有効性や交通量や容量の予測における不確実性の影響,飛行方面別の待機時間の差異について考察を行った.その結果,現状の出発制御については,空中待機時間が想定より少ない傾向がある(オーバーコントロール)ことが示唆され,また,方面別に制御機の空中待機時間に差異があり,方面別に遅延や管制負荷の偏りが存在する可能性があることが分かった.さらに容量の予測精度の影響が大きいことも示した.これらの結果から,気象条件の将来予測の困難さ等から容量値の完全な予測は容易ではないが,その正確性を上げる方策の検討が重要で,交通量予測の面では出発制御時刻の順守ルールも検討対象として考えられることを示した.また,羽田のターミナル空域周辺におけるローカルな航空交通流管理と羽田再拡張後の方面別滑走路制約による遅延への影響に関してシミュレーション分析を行い,方面別滑走路制約による空港全体の容量の分割が将来的な需要拡大時に特に需要が多い方面の遅延の増加に繋る一方で,メタリング支援機能等の管制機能の高度化により,その遅延が大幅に軽減できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的としては(1)欧米におけるATFMの実態と将来計画の調査および我が国との比較,(2) 航空交通流の実績データを活用した航空交通流の特性およびATFMの実態分析,の2点を挙げており,(1)については文献調査から特に米国のATFM手法と実際について詳細に把握はできたが,欧州におけるATFMについては最新状況については必ずしもフォローしきれていない.(2)については,我が国の航空交通流の特性に関して羽田到着機に限定されたものの概ね把握でき,ATFMの実態,さらにその有効性に関して評価を行うとともに,今後の改善方策についても提示できた.当初は離陸機とのインタラクションも評価する予定であったがデータ整備が想定通りに進まず,この点に関しては次年度に引き続き検討を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については,現在までに得られた羽田空港に対する出発制御の有効性における課題と我が国の航空交通流の特性をもとに,離陸機とのインタラクションや空港容量の予測精度,その不確実性を考慮した新たなATFM手法を検討し,その効果をシミュレーションにより評価する.また,ターミナル空域におけるローカルな管制運用方式の違いによる遅延解消やCO2削減効果に関して分析を行うとともに,そのローカルな運用がATFMに与える影響についても分析を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費に関しては,ATFMの高度化手法等に関する学術研究論文・報告書・書籍等の購入費,また欧州を中心としたATFMの実態と将来計画に関する調査旅費,成果発表ための国内外の学会参加に関わる旅費,またシミュレーション構築や管制運用の高度化を検討するにあたっての専門的知識の提供依頼に関わる謝金,を主に予定している.
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