研究課題
本研究では,我が国の航空交通流の最大のボトルネックである羽田空港発着便の遅延状況および混雑緩和のための出発制御手法の実態を分析し,その特性を明らかにした.特に羽田空港到着機に対する出発制御の有効性に関して空中待機時間の推計値から評価を行い,容量予測の不確実性の影響の大きさについて考察を行った.続いて,4本目の滑走路を供用開始後(再拡張後)の羽田空港では狭隘なターミナル空域における飛行経路の交錯を最小限にするために飛行方面ごとに使用する滑走路を限定する「方面別滑走路方式」を採用しているが,その方式が遅延時間に与える影響について,新たに開発した羽田空港の容量推計手法を活用して定量的に分析を行った.その結果,方面別滑走路により需要の方面別偏りにより遅延時間も大きく偏り,その解消によって大幅な遅延削減効果があることが分かった.最後に,再拡張後の羽田空港では離着陸機が相互従属運用であることを念頭に,総遅延時間や燃料消費コスト(CO2排出)などの最小化を目的関数とした時間帯別の離着陸便数の最適配分モデルの開発を行い,最適化による遅延やCO2の削減効果を示すとともに,羽田空港の滑走路容量特性を考慮した滑走路使用戦略について一定の知見を得た.本研究の成果は,現在,国内外で進められている次世代管制システムの研究開発,特に時間管理の高度化を検討する上で基礎的な情報を提供し,我が国の航空交通流特性の実態を踏まえた新たな航空交通流管理手法の開発の基礎となりうると考えている.
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Asian Transport Studies
巻: Vol.2, Issue.3 ページ: 295-308