(i)阪神・淡路大震災時の事例分析 阪神・淡路大震災時の運行バス台数,輸送人員,運行ルート,所要時間,要員・用地の確保等のデータを入手し,入手したデータの加工および代行バス運行による成果と課題の分析を行い,当時の代行バスを含めた公共交通における成果と課題の抽出を行った.その結果,①調整の場の設置による早期運行開始,②バス専用レーンと直行便導入による輸送効率の改善,③乗降場の工夫による輸送力向上,④被災地外からのバス車両・運転士の応援,⑤効果的な代行バス運行路線の設定により,バスによって鉄道に近い輸送力を実現したことが分かった. (ii)首都圏の代行バス運行事例の推計 本研究では、鉄道長期不通時の代行バスの効果を定量的に把握するため、バス輸送による影響を定量的に把握する手法を構築した。また大都市圏の広域に渡る検討に資するため、輸送密度の高い地域と低い地域の2箇所それぞれにおいて鉄道不通区間が発生した場合の影響の比較を行った。①路線密度、輸送密度が高い地域の場合、不通区間と並行に都心部へ向かうバスルートでは、過去の代替バス輸送と同程度の1日あたり10万人の利用者があり、並行路線の混雑は20%程度緩和される。環状方向のバスルートでは1日あたり1.4~3万人の利用者であり、混雑率に余裕がある他路線と結ぶことで、並行路線への集中を分散させる効果があることが分かった。混雑分散の観点から混雑状況等の利用者に対する情報提供方法について検討しておくことが重要である。②路線密度、輸送密度が低い地域においてバス輸送を行った場合では、不通区間を並行につなぐバスルートよりも、並行する鉄道路線に接続する環状方向のバスルートの方が多く利用される。バスルートを設定した鉄道駅では、バス輸送を行うことにより利用者数が20~50%増加するため、発着場から駅までの誘導方策等を検討しておく必要がある。
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