研究課題/領域番号 |
23760509
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研究機関 | 福島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高荒 智子 福島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80455112)
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キーワード | 凝集阻害 / キトサン / ポリ塩化アルミニウム |
研究概要 |
本研究では,原水の水質変化に影響を受けることなくより少ない凝集剤で最良の処理を実現させるため,キトサンを浄水処理の凝集補助剤として活用することを提案している.本年度は,凝集効果を低下させる要因として凝集阻害物質(藻類細胞)および水温に着眼点を置き,キトサンを凝集補助剤として使用した際の凝集処理効果の変化について考察を行った. 実験では,凝集阻害の原因藻類であるMicrocystisを含む湖沼水を原水とし,PAC(ポリ塩化アルミニウム)による凝集実験を行った.PACのみの添加の場合,原水を濁度2NTU以下にするために60mg/LのPAC注入量を必要としたが,キトサン0.5mg/Lと併用処理することにより,PAC添加濃度5mg/Lでの濁度除去が観察された.また,PACとキトサンの併用処理ではPAC単独処理よりも処理水の濁度が低下しており,高効率に処理が可能であることが示唆された.キトサンは,タンパク質等や濁度の高い排水処理での凝集効果が有効とされているが,本実験より,浄水処理レベルの水に対しても活用可能であることが示唆され,藻類などの凝集阻害の原因物質が含まれている場合でも効率的に凝集沈殿を行うことが可能であることが予想された. さらに,凝集処理効果が低いとされる低水温の原水に対してキトサンを凝集補助剤として使用し,PACによる凝集実験を行った.その結果,キトサンを添加すると低水温の条件下でも凝集処理が良好に行われた.また,PAC添加率10 ㎎/Lでも濁度2 NTU以下の上澄水が得られており,キトサンとPACの併用処理によって従来よりも効率的な凝集沈殿処理を行えることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に当たる平成24年度は,凝集阻害物質として作用する藻類細胞やAOMを用いて,キトサンの凝集阻害抑制効果や抑制方法について検証し,キトサンを溶解させる溶媒の変化が及ぼす凝集補助効果について検討することを目的とした.藻類増殖が確認された湖沼の凝集実験から,キトサンが藻類細胞の凝集沈殿補助に効果的に作用することを明らかにした.しかしながら,藻類から生産されるAOMに対する凝集補助効果については十分な考察を進めることができなかったことから,これらの実験は引き続き次年度に行う予定である.キトサンの溶媒が与える凝集補助効果の影響に関する考察では,一般に溶媒として利用されている酢酸の他に,塩酸を溶媒に使用した場合でも同程度の凝集補助効果が確認された.次年度以降,浄水場での保管や取扱易さを考慮し,最適な溶媒を決定する.
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今後の研究の推進方策 |
①キトサンの凝集補助効果の評価:凝集阻害物質あるいは藻類細胞存在下においてキトサンを凝集助剤として用いた場合の凝集補助効果を評価する. ①キトサンの劣化時間の検討:実プラントで使用することを想定した場合,薬品の取扱いや保存のしやすさも重要な要素であると考えられる.これまでに行ってきた実験の結果から,長期保存したキトサンは凝集補助効果が低下する傾向が観察されていることから,保存に伴うキトサンの劣化とその対策について検討する. ②発生汚泥の構造分析と分解速度:凝集助剤を用いた凝集処理によって発生した汚泥を採取し,発生汚泥量の削減率を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
キトサンが凝集阻害防止に寄与することを明らかにするには,凝集阻害物質であるAOM存在下におけるキトサンの凝集補助効果を証明する必要がある.今後の研究費は,凝集阻害物質抽出に必要な実験環境を整えるために使用すると共に,今年度の研究計画にある発生汚泥評価に係る費用として活用する予定である.
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