藻類増殖や集中豪雨による河川の高濁度化などに見られるように,浄水処理における原水水質変動は著しく,凝集沈殿処理に対する負荷が一時的に増加する傾向が見られる。凝集沈殿処理は急速ろ過方式のメインとする処理であり,凝集沈殿による処理効果は後段のろ過プロセスへ影響することから,原水変動に左右されない安定した凝集沈殿処理が求められる。上述した問題に対しては,凝集沈殿処理効率が低下するなどの障害が発生することから凝集剤を通常よりも多く注入するが、副次的な問題を含むことから原水水質に左右されない安定した処理方法を考案することが必要である。そこで本研究は、自然由来で安全なキトサンを凝集補助剤として用いることで、凝集処理効率が低下する原水に対しても凝集剤の使用量を増加させることのない浄水処理を目指す。 本年度は,凝集阻害を起こすMicrocystis (以下MA)に対するキトサンの凝集補助効果について考察を行った。MAは実験室にて純粋培養し,細胞表面および細胞外有機物を生理食塩水による洗浄によって取り除き、アルカリ度50mg/L,濁度10NTU,pH 7の原水を作成した。凝集剤は塩化アルミニウム(以下、PACl)を用た。 実験の結果、キトサンの作用によってPAClの注入率を約30%削減できることが確認され,原水の水質変化に対しても対応可能なことが示された。また,E260に関してもキトサンを使用した場合の方が除去されており、凝集沈殿処理では処理が不十分されている消毒副生成物の前駆物質の除去に対しても、一定の効果を示した。さらに、ろ過池の負荷を示すSTIを測定したところ、キトサンの使用の有無に変化はみられず、キトサンの処理水への残留性の可能性も低いことが確認された。さらに本年度の実験から,キトサンは凝集剤削減量と同程度の発生汚泥量の削減にも寄与することが示され,凝集補助剤としての有用性が確認された。
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