(1)太陽光を利用した光分解実験 今年度は,太陽光を利用した光分解実験を水環境保全再生研究ステーション臨湖実験施設の屋上で行った。曇天時(約15MJ/m2/day)の実験では,有意なDOM分解が見られなかった。曇天時の太陽光放射照度は,昨年の人工光を用いた光分解実験において約4時間照射に相当するため,放射照度が充分でなかったためと考えられる。晴天時(約25MJ/m2/day)には10%ほどのDOM分解が見られ,分解を進めるためには,ある程度のエネルギーが必要である事が分かった。これは昨年得られた人工光実験での知見が裏付けるものである。 (2)光分解によるDOMの分子サイズ及び蛍光特性の変化 人工光照射実験では,DOMの分子サイズ及び蛍光特性の変化についてより詳細に解析を行った。分子サイズについては,サイズ排除クロマトグラフィーを用い,吸光度(254nm),蛍光(励起340nm,蛍光430nm),TOC(炭素量)で検出した。DOMの生物分解特性は分子量と関連性が高い事から,以上の解析を通じて,光分解後DOMの生物分解特性を把握する事ができる。TOC検出では,光分解前のDOMには分子量35000Da以上のピーク(Peak I),分子量1000Daのピーク(Peak II),分子量500Daのピーク(Peak III)が確認された。6時間の照射後,Peak Iは完全に消滅,Peak IIは30%の減衰,Peak IIIは50%増大した。すなわち,短時間照射でDOM濃度に変化は見られなかったが,分子量分布では高分子→低分子への変化が起きたと考えられる。なお蛍光で検出した場合は,分子量500~1000Da付近に3つのピークが確認されたが,短時間照射でいずれも80~90%減衰した。すなわち,短時間照射でDOM中の蛍光物質(フミン様物質)は非蛍光物質へと変化したと考えられる。
|