本研究では、相互作用の影響を受ける建築物の最大地震応答評価手法の開発に関して、「1.静的非線形荷重増分解析結果に基づくスウェイおよびロッキングの減衰評価手法の開発」、「2.等価1自由度系の応答値に高次モード応答を考慮する手法の開発」および「3.相互作用の影響を受ける建築物に対する簡便で実用的な地震応答評価手法の開発」の3つの達成目標を設定していた。初年度(平成23年度)は、上記の達成目標1および2に関して、評価手法を構築すると共に、その妥当性についての検証をプロトタイプとなる建築物を用いて行った。初年度の研究の主な成果として、評価手法の構築、提案手法による最大地震応答値の算出、評価手法の妥当性および適用範囲の検討を行うための時刻歴応答解析用の解析モデルの構築の3つが挙げられる。しかしながら、妥当性の検証については、時刻歴地震応答解析に用いる解析モデルの構築に予想以上の時間を費やしたため、作業が停滞し、妥当性の検証を終えることができなった。最終年度(平成24年度)は、初年度に完了できなかったプロトタイプによる妥当性の検証を実施した後、上記達成目標2および3に関して、評価手法の適用範囲の検討を行うためのパラメトリック解析を実施した。パラメトリック解析については、計画している6つのパラメータのうち、必須のパラメータである「建物高さ」、「地盤剛性」、「入力地震動」の3つについて優先的に検討を行った。これら3つのパラメータに関する検討を行うことにより、各種の地盤上にある低層から中層までの建物の地震応答評価への適用性を探った。最終年度の成果として、評価手法の妥当性をプロトタイプで検証したこと、「建物高さ」、「地盤剛性」、「入力地震動」の3つの因子が評価手法に及ぼす影響を検討したことが挙げられる。
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