鉄筋コンクリート造ラーメンに扁平梁を採用できるように、隅柱-扁平梁接合部の2方向加力実験を行った。扁平梁は階高を変えずに梁下有効せいを高くできるため、眺望改善のために集合住宅などで採用される。しかし、隅柱で扁平梁が直交する接合部では、扁平梁主筋の定着が納まらず、設計法も確立されていない。また、扁平梁が直交して取り合っているため、梁が曲げ降伏する塑性ヒンジ位置の決定方法もない。この実験では、1)梁端部の主筋を増やして梁の塑性ヒンジ位置を柱面から離すことで梁曲げ計算強度を発揮すること、2)接合部においてはねじり応力を円滑に伝達させるために3方向に補強筋を配置することが有効であること、を確認した。後者の配筋方法は、互いに直交する梁の主筋を網目状に交差させ、鉛直方向にも補強筋を配置したもので、補強筋は閉鎖型でなく、梁主筋は定着起点を柱面とした直線定着であったが、十分な性能を発揮した。 研究期間全体を通じて、2方向加力を受ける鉄筋コンクリート梁柱接合部の3次元応力伝達を考慮すると、接合部の配筋などについて次のことに注意する必要があることを実験で確かめた。1)2方向加力を受ける場合、梁主筋の定着に対して条件が厳しくなるため、余裕をある設計が必要であり、主筋径も小さくすることが望ましい。2)接合部周りのねじれ応力伝達のためには、3方向に補強筋を配置することが肝要である。3)隅柱梁接合部の損傷が柱軸回りのねじれ剛性を著しく低下させる。このねじれ剛性の低下が建物全体の地震応答に与える影響については今後の課題であるが、接合部に隣接する床スラブや壁によってねじりを抑制されることは十分に考えられる。昨今、壁と柱の間にスリットを設けることが多くなってきているが、少なくともスリットは接合部のねじれ抑制には寄与しないと考えられる。
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