低強度高靱性袖壁パネルを用いた高靱性型構造システムの開発のために鉄骨柱試験体を作成し、載荷実験を行った。今年度は、より変形性能を高めることを目的に、鋼柱梁部材とPCa袖壁パネルとの接合部を補強すること試みた。昨年まではコッターを柱梁に接着し、パネルにも凹凸をつけておき、その隙間に無収縮モルタルを充填することで接合していた。過去2年間の実験研究においても、袖壁パネルの性能を引き出すことができてはいたが、変形が大きな範囲では接合部にひび割れが生じてしまうので、PCa袖壁パネルのエネルギー吸収能力をさらに高めるために接合部の補強方法について検討を行った。具体的には、PCaパネルを容易に取り外して再度設置できるようにすること、鉄骨の柱、梁には溶接が必要となるアンカー工事などをせずに接合したいこと、低強度のPCaパネルなので大きな接合の強度は必要ではないと考えられることから、連続繊維シートを袖壁パネルと柱梁部材の接合部に外側から貼り付けて補強する工法の有効性を確認することを試みた。その結果、1/100以上の大きな変形まで接合部における損傷は生じず、PCaパネル袖壁付柱の耐力・変形能力は向上することが確認できた。 さらに、低強度高靱性袖壁パネル付柱を有するモデル建物を想定した地震応答解析を行った。今年度は、前年度の検討に加えて、柱部分の復元力特性として、鉄筋コンクリート構造をモデル化した場合についても検討を行った。柱部分の復元力特性のモデル化の違いにより、袖壁の量と地震応答低減効果の関係など若干の差異もあったが、単純に柱の強度を高くした場合よりも、袖壁パネルを有すると仮定したモデル建物のほうが、制振効果によって応答低減効果があることなどを明らかにした。 低強度高靱性パネルを袖壁に使用することによる超高靱性型構造システムの開発のための基礎的な検討ができた。
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