研究課題/領域番号 |
23760521
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研究機関 | 一般財団法人建築研究協会 |
研究代表者 |
清水 秀丸 (財)建築研究協会, その他部局等, 研究員 (70378917)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 木造建物 / 軸組構法 / 枠組壁工法 / 耐震 |
研究概要 |
本研究は、2階建て以上の建物が必ず持つ階段が有する耐震性能を積極的に活用し、構造実験と構造力学モデルの構築による数値解析の実施から、その耐震性能を定量的に把握することを目的とする。階段の耐力発現機構の解明は、新築住宅に対する耐震設計のみでなく既存住宅の耐震補強にも適応でき、既存不適格住宅に対する簡易な耐震補強としても非常に有用である。二酸化炭素排出量の制御に代表される地球環境負荷の軽減対策に伴い、建設分野では新築建物や既存建物の長寿命化に対する構造的技術開発が求められている。新築住宅の耐震化や既存住宅に対する安価かつ簡便な耐震補強手法の開発こそ、今後我が国が目指す循環型社会を構築する上でも大変有意義なことである。平成23年度は、耐震性能を把握するための構造実験を実施した。試験体は、幅2.73m、高さ2.73mの2構面を0.91mの間隔で並列配置した間に直線階段を持つ軸組構法試験体(壁有)、枠組壁工法試験体の 2体である。実験はタイロッド式による変位制御の静的交番3回繰返しとし、1/30rad以後は、油圧ジャッキのストロークが縮める側で引ききりとして実験を行った。実験より、軸組構法試験体(壁有)の最大耐力は62.2kN、枠組壁工法試験体は48.8kNであった。最大耐力を記録した変形角は、軸組構法試験体(壁有)0.069rad、枠組壁工法試験体で0.014radである。軸組構法の直線階段では、最大耐力近傍で耐力を維持しながら変形する、大きな変形性能が見られた。直線階段試験体について、壁倍率による評価を実施した。壁倍率は、軸組構法の直線階段試験体では、石膏ボードと階段の加算則が成り立つ事を示し、石膏ボードの壁倍率(1.0など)以上であった。枠組壁工法では、石膏ボードのビスによって耐力が大きく変化しない可能性が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、当初予定していた目標をほぼ達成することが出来た。階段が有する耐震性能を把握するため、軸組構法・枠組壁工法の試験体各1体の構造実験を実施し、貴重な耐震データを得ることができた。軸組構法試験体では、石膏ボードも併せ持つ試験体としたことで、実際の建物を建設する場合の耐力加算に関する根拠を得ることもできている。枠組壁工法の試験体においても、石膏ボードのビスによって耐力が大きく変化しない可能性が高いことを確認することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、階段の耐震性能発現機構を表現できる構造力学的モデル化と、既存の実大実験に占める階段の耐震性能割合の定量的評価を目標とした解析的研究を中心とする。また、海外の事例も含めた文献調査と、積極的な情報交換を行う。解析的研究では、階段の耐震性能発現機構を表現できる構造力学的モデル化として、階段の側板部分とビスに着目し、側板をブレースに、ビスをせん断バネと置換することで構造力学モデルを構築する。蹴上げ・踏み板は側板の座屈を制御する効果として作用させ、ブレースの圧縮・引張による最大耐力の違いが現れないようモデル化する。また、解析モデルは海外で多く用いられている最新のモデル化手法も参考とするため、文献調査や海外研究者との交流を含めた研究活動を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究計画では、実験に関する消耗品費等が当初予定金額より少なく済んだため、約120千円を持ち越とした。平成24年度は、主に文献調査・解析的研究と研究成果の積極的な公表を行う。階段の耐震性能発現機構を表現できる構造力学的モデル化手法構築のための文献調査費用として、100千円。解析的な構造力学的モデルの構築は、コンピューターによる数値解析とし、解析に要する費用として270千円。旅費としては、国内旅費で解析モデル構築に関する研究打合せの交通費等として100千円、外国旅費は研究成果発表および海外の研究者との情報交換として12thWCTE(ニュージーランド・オークランド)、15thWCEE(ポルトガル・リスボン)を450千円を申請する。
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