研究課題/領域番号 |
23760527
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松尾 真太朗 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (40583159)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 鋼構造柱梁接合部 / 外ダイアフラム / 角形鋼管 / 2方向加力 / 降伏耐力 / 繰返し載荷実験 |
研究概要 |
鋼構造建物の品質安定化を目指して,これまでに外ダイアフラムを用いた柱梁接合部の設計法を構築してきたが,ここでの接合部は1方向の力が作用する場合を対象とするものである.実建物では柱に2方向の力が作用する場合が多く存在し,特に外ダイアフラム形式柱梁接合部では2方向入力の条件によっては1方向入力に比べて危険な場合がありうるため,それらのケースについて接合部挙動を把握しておくことが重要である.そこで平成23年度は,2方向荷重下における外ダイアフラム形式柱梁接合部の弾塑性挙動を把握するための基礎実験を実施した.具体的には,角形鋼管柱の幅厚比を2種類,加力条件を3種類設定し,各組合せにより計5体の繰返し載荷実験を実施した.実験の実施時期が3月になったため,詳細なデータ分析は継続中であるが,現状で得られた知見を示すと以下の通りとなる.(1)2方向逆対称加力による接合部耐力は1方向加力に比べて低い傾向にある.低下の程度は10数%程度であった.(2)2方向対称加力による接合部耐力は1方向加力と同等の値を示す.(3)加力条件に拘らず安定した紡錘形の履歴性状を示した.(4)知見(1)~(3)は鋼管の幅厚比によらずに得られた傾向である.今後は外ダイアフラムの歪性状などの分析を通じて,2方向加力における耐力低下の原因について検討していく.また2方向加力に対する外ダイアフラム形式柱梁接合部の耐力について,塑性解析による評価を試みた.2方向対称加力については,力学的な条件から1方向加力の場合と同等な耐力を有すると予測され,上記の実験結果とも合致する結果となった.一方で,2方向逆対称加力については,想定した崩壊メカニズムからは1方向加力に比べて数%程度の耐力低下につながることが予測されたが,実験による耐力の低下度合いは予測値よりも高めに現れた.これについては,メカニズムの再検討も含めて今後更に分析する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通りに5体の試験体を製作し,載荷実験の実施までを完了した.主たる目的である,1方向の力に対する挙動との差異,2方向の力の組合せによる挙動の差異,剛性・耐力に与える影響に関しては,今回の実験で概ねこれらを把握できるデータを獲得し,研究実績概要に要約した知見が得られた.また,耐力評価法に関しても,一応の定式化までは完了することができた.研究実績概要にも記したとおり,2方向逆対称に対する耐力評価を精度よくできるには至っていないが,この課題を検討するためのデータはある程度取得できたものと考えられる.以上より,平成23年度の研究達成度は,概ね順調に進展しているものと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
当初の平成24年度計画では,外ダイアフラムと角形鋼管の溶接部の設計に関する検討を行うための試験体(5体)について,載荷実験を行い,溶接部の終局状態を調査するとともに溶接部設計法の妥当性を確認することを考えていた.しかしながら,平成23年度の実験では,載荷フレームに取り付けた一部の治具の剛性が不足したため,特に大振幅時の接合部挙動を詳細に追うことが困難であった.また,終局状態の確認にも至っていない.そこで,平成24年度は,まず治具の改良を行い,接合部詳細を平成23年度と同一とした2方向加力用試験体を再度実験する.その後,溶接部詳細を設計変数とする試験体を製作し,溶接部を含めた接合部挙動の調査を行う.なお,申請時に比べて研究費が減額になったため,試験体数は3体程度を考えている.さらに,2方向加力時の詳細な接合部挙動を追跡するために,有限要素法解析ソフトを用いた数値実験も実施する.これらの分析結果にもとづいて,2方向加力時の外ダイアフラム形式柱梁接合部の設計法をまとめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費使用計画は以下の通りである.・骨組試験体(3体×350千円)・・・1050千円・治具改良費 ・・・250千円・歪ゲージ一式 ・・・100千円・論文投稿費 ・・・50千円・数値計算ソフトウェア利用料 ・・・50千円
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