鋼構造建物の品質安定化を目指して,既に外ダイアフラム形式柱梁接合部の設計法が構築されているが,ここでの接合部は1方向加力を対象とするものである.実建物では柱に2方向の力が作用する場合が多く存在し,特に外ダイアフラム形式柱梁接合部では2方向加力の条件によっては1方向に比べて危険な場合がありうるため,それらのケースについて接合部挙動を把握しておくことが重要である. そこで本研究では,2方向加力下における外ダイアフラム形式柱梁接合部の弾塑性挙動を把握するための基礎実験として,角形鋼管柱の幅厚比×2種類と加力条件×3種類の組合せによる計5体の繰返し載荷実験(平成23年度)を実施した.さらに平成24年度は,接合部設計に資する詳細なデータを取得するために,梁せい×3種類,梁・接合部耐力比×3種類および溶接サイズ×2種類の組合せによる計6体の繰返し載荷実験を実施した.本実験により得られた知見は以下の通りである. ①2方向逆対称加力による接合部耐力は1方向加力に比べて10数%低くなる.②2方向対称加力による接合部耐力は1方向加力と同等以上である.③加力条件に拘らず安定した紡錘形の履歴性状を示す.④接合部の曲げ耐力は梁せいに概ね比例する.ただし,パネルアスペクト比が1程度では上下の局部変形が互いに干渉して若干の耐力低下が見られる.⑤従来の設計式により,接合部の保有耐力接合条件はほぼ満足するが,効率的な梁降伏を確保するためには多少の耐力低減を考慮すべきケースも考えられる.⑥従来の設計法による溶接サイズを確保すれば,溶接部の亀裂進展による急激な耐力低下を避けられる.⑦外ダイアフラムの歪性状およびFEM解析により,2方向加力時の耐力低下の要因を把握した.⑧隅柱を除けば,2方向加力下であっても,従来の設計法で十分対応できる可能性を確認した.
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