研究課題/領域番号 |
23760534
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮津 裕次 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (70547091)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 木質ラーメン構造 / オイルダンパ / 時刻歴地震応答解析 / 動的載荷実験 |
研究概要 |
昨年度は、中高層の木質ラーメン構造建物の時刻歴地震応答解析を行い、中高層木造建築物の地震応答性状を把握するとともに、圧効きオイルダンパを設置した場合の応答について検討し、十分な応答低減効果を得るのに必要となるダンパの性能を策定すること、またダンパを設置した実大軸組に対して載荷実験を行い、ダンパによる効果および軸組内でのダンパの挙動について詳細に検討することを主な目的とした。まず、時刻歴地震応答解析においてより実現象に近い解析結果を得るために、既往の代表的な2種類の構法によって製作した実大の木質ラーメン柱梁接合部の載荷実験を実施し、解析モデルのパラメータを決定した。作成した解析モデルを用いて4層建物を対象に解析を行った結果、各層に適量のオイルダンパを設置することで、単に各層の耐力を増加させた場合と比較して、建物の応答加速度を過度に増加させることなく変形(損傷)を安定して低減できることを明らかにした。また、木造住宅用として開発した圧効きオイルダンパであっても、柱梁軸組への設置方法を工夫することで、過大な基数を設置せずとも十分な応答低減効果が得られることを示した。次いで、既往の構法を用いた木質ラーメン軸組の柱梁接合部の実大試験体を製作し、方杖型に圧効きオイルダンパを設置して動的載荷実験を行った。実験結果からは、ダンパを設置することでエネルギー吸収能力が想定通りに向上すること、またダンパの抵抗力が周辺部材に悪い影響を及ぼすことは無いこと等を確認した。さらに、柱梁接合部の高靱性化を図るなどダンパの併用に適した仕様に改良することで構造全体としての性能をより良くすることが出来る可能性も見られ、総じて次年度の研究に向けての有意義な成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初の計画では、次年度にダンパを設置した軸組試験体の載荷実験を実施する予定としていたが、「研究実績の概要」に記した通り、昨年度後半に柱梁接合部の部分試験体ではあるもののダンパを設置した状態での実験を実施することができ、次年度の研究に向けた有用な知見を得ることが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、昨年度の解析検討および実験検討で得られた成果をもとに、軸組部材への施工性の良いダンパの取り付け方法やダンパ仕様などの各部のディテールの検討を進めるとともに、柱梁接合部の力学性能の改善方法も検討しより有効な構造システムの提案を行う。具体的には、まず、ダンパを組み込んだ木質ラーメン架構の力学特性を確認するための実験を実施する。圧効きオイルダンパを設置した1層1スパンの実大木質ラーメン架構の動的載荷実験を行い、ダンパが架構内で想定する挙動を示すか、また架構全体として想定する力学性能を示すか等の基本的な特性を明らかにする。また、得られた実験結果を通して、ダンパの仕様やダンパと軸組部材との取り付け部の仕様など、細部の改良を行う。実験システムには、研究代表者らの先行研究で構築したシステムをほぼそのまま用いることが出来る。試験パラメータとしては、ダンパの設置方法、柱梁接合部の接合仕様などを予定している。次に、ダンパを設置することによる地震応答の低減効果を実験的に検証するため、実大の立体木質ラーメン架構の動的加振実験を実施する。試験体の規模は、使用を予定している試験機の仕様上の制限も考慮して、スパン3m程度、高さ方向は1層を計画している。本実験を通して、実大レベルでの実現象を確認し、ダンパを設置することの有効性を明らかにすることは、中高層木造建築物への制振構造の適用を実用化する為には、極めて大きな役割を果たす。また、実験と解析との比較により力学モデルの高精度化も同時に検討することができ、設計業務のための環境を整える意味でも、期待できる成果は大きい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、申請時の計画書の通り実験的な検討を主としているため、研究費の多くは試験体や実験用冶具の購入費(物品費)に計上している。その他は、遠隔地での実験も計画しているために必要となる旅費と、実験で取得したデータの整理の補助作業としての謝金を計上している。
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