研究課題/領域番号 |
23760536
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
貞末 和史 広島工業大学, 工学部, 准教授 (20401573)
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キーワード | コンクリー構造 / 耐震補強 / あと施工アンカー |
研究概要 |
前年度の研究によって,せん断力を受ける「傾斜型あと施工アンカー」の破壊モードは,「アンカー筋のせん断降伏」,「アンカー筋の付着割裂破壊」,「コンクリートのコーン状破壊」,「コンクリートの支圧破壊」に分類できることを明らかにしている。平成24年度は,既存鉄筋コンクリート部材と耐震補強部材が傾斜型あと施工アンカーを用いて間接接合されることを想定した接合部の抵抗機構を明らかにし,破壊モードに応じたせん断強度の評価式を構築した。 アンカー筋のせん断降伏によって決まるせん断強度の評価式に関しては,研究代表者が行なった既往の実験結果との比較検討を行い,評価式の妥当性を検証した。 アンカー筋の付着割裂破壊によって決まるせん断強度に関しては,アンカー筋の傾斜の有無に関わらず,既往の評価式を準用できると考えている。 コンクリートのコーン状破壊によって決まるせん断強度の評価式に関しては,前年度に行なった実験結果との比較検討を行い,評価式の妥当性を検証した。 コンクリートの支圧破壊によって決まるせん断強度の評価式に関しては,平成24年度に行なった実験結果との比較検討を行い,評価式の妥当性を検証した。 提案した耐力評価式を用いた検討によって,コンクリートのコーン状破壊が先行しないような間接接合部の設計が可能な施工条件下では,在来型と比較して,傾斜型あと施工アンカーは大きなせん断強度が得られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の1つは,「在来型あと施工アンカー」に対して,「傾斜型あと施工アンカー」を有効的に適用する方法を明らかにすることである。せん断力を受ける傾斜型あと施工アンカーの最大耐力が決定される破壊モードは,「アンカー筋の降伏」,「アンカー筋の付着割裂破壊」,「コンクリートのコーン状破壊」,「コンクリートの支圧破壊」に分類されることを示し,実験による検証を行なった結果,コンクリートのコーン状破壊が先行する場合のみ,在来型と比較して傾斜型あと施工アンカーの最大強度は小さくなることが明らかとなった。しかしながら,各破壊モードに対するせん断強度の評価式を構築し,コンクリートのコーン状破壊を生じさせない設計条件を明示することで,傾斜型あと施工アンカーを有効的に用いる方法を明らかにした。 本研究の2つめの目的は,傾斜型あと施工アンカーを用いた耐震補強工法の開発と耐震性能の評価方法を構築することである。耐震補強工法の開発に関しては,増設鉄筋コンクリート袖壁補強構法へ傾斜型あと施工アンカーを適用することを考案した。平成25年度は,考案した構法の効果を確認するための構造実験を行った後,耐震性能の評価方法を構築する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,傾斜型あと施工アンカーを用いて既存の鉄筋コンクリート柱を袖壁補強する部材の構造性能について検討する。研究課題申請時には,傾斜型あと施工アンカーを用いた既存鉄筋コンクリート造建物の耐震補強構法として,枠付き鉄骨ブレース補強への適用を考えていたが,関連する研究を調査した結果,傾斜型あと施工アンカーを袖壁補強へ用いる構法についても有効であると判断したため,優先して検討を行なう。 傾斜型あと施工アンカーを用いて袖壁補強した鉄筋コンクリート柱の構造性能の優劣を検証するための構造実験を行なう。袖壁補強した鉄筋コンクリート柱試験体を製作し,一定の圧縮軸力下で正負繰り返しの曲げモーメントとせん断力を与える載荷を行なう。あと施工アンカーの傾斜角度,配列等を実験変数とし,いずれの場合も既存鉄筋コンクリート柱と袖壁の接合部の破壊が先行して最大耐力が決まる試験体とし,在来型と比較して,傾斜型あと施工アンカーを用いた袖壁補強が有効であるのか確認する。 一方で,実験を補う形で非線形有限要素解析を実施して,既存鉄筋コンクリート柱と袖壁の接合部に生じる応力について検討し,アンカー筋が傾斜していることの効果を確認すると共に,アンカー筋の有効な傾斜角度と配置について明らかにする。 実験結果の分析に有限要素解析による理論的な検討を加えて,傾斜型あと施工アンカーを用いた鉄筋コンクリート柱の抵抗機構と破壊メカニズムを明らかにし,耐力評価式を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究における研究経費の使用は,実験実施が多くの部分を占める。消耗品は,鉄筋やコンクリートのひずみ度を計測するひずみゲージが必要となる。また,試験体製作費は,生コン代,鉄筋および加工代,型枠制作費などとして必要となる。 有限要素解析は,市販の解析プログラムを用いた解析を行なうことを計画しており,解析プログラムの購入・保守費として研究経費を使用することを計画している。 また,平成24年度に行なった研究の成果について,国内で開かれる学術講演会で発表するための旅費と論文掲載料として研究経費を使用する。さらに,平成25年2月にインド・ムンバイで開催されるThe Fourth International fib Congress 2014に参加して,研究発表および本研究に関連する研究の情報収集を行なうための旅費として研究経費を使用することを計画している。
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