本研究では、頭付きスタッド溶接と撃込み鋲接合を用いたL型シアコネクタの2種類の異なる断面欠損が鋼材の引張特性に与える影響を引張試験、硬さ試験、組織観察の3種類の試験によって比較検討した。合球構造における機械的接合と冶金的接合の研究より得られた知見を以下に示す。 1)撃込み鋲接合を用いたL型シアコネクタと頭付きスタッド溶接が鋼材の引張耐力に与えた影響はほとんど無かった。しかし、撃込み鋲接合L型シアコネクタは頭付きスタッド溶接に比べて鋼材の塑性変形能力に与える影響が大きい。2)ビッカース硬さ分布から、頭付きスタッド溶接は溶接ビード部と鋼材の境界面から3mm範囲までの鋼材が硬化していることに比べ、鋼材の断面欠損を伴う撃込み鋲接合は撃込み鋲と鋼材の境界面から6mm範囲までの鋼材が硬化している。3)マクロ組織観察より、頭付きスタッド溶接は溶接材と鋼材が溶け込んで組織が連続しているのに対し、撃込み鋲と鋼材の組織と不連続していることが分かった。また、撃込み鋲接合は鋼材を押しのけて接合されていることがマクロ組織観察より確認できた。4)合成スラブに用いた撃込み鋲接合のせん断耐力は焼抜き栓溶接より低いが、十分な変形を伴って最大せん断耐力に達した。ただし、最大以降は撃込み鋲の「せん断破断」や「引き抜き」による急激なせん断耐力の低下が見られた。一方、焼抜き栓溶接のせん断耐力は撃込み鋲接合より大きく、その後の耐力低下も緩やかであった。5)合成スラブのデッキプレート接合に撃込み鋲接合を用いる場合、合成スラブの破壊形式は撃込み鋲で決まることが確認できた。6)合成スラブに用いる撃込み鋲接合においてコンクリートを打設する場合、コンクリートを打設しない場合より接合性能は上昇することが確認できた。
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