研究課題/領域番号 |
23760540
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研究機関 | 独立行政法人建築研究所 |
研究代表者 |
壁谷澤 寿一 独立行政法人建築研究所, 構造研究グループ, 研究員 (10533953)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | そで壁 / 腰壁 / 剛域 / 静的漸増載荷実験 / 鉄筋コンクリート |
研究概要 |
平成23年度は当初の計画通り、鉄筋コンクリートそで壁および腰壁つき柱試験体の静的繰返し載荷実験を実施した。静的載荷実験は腰壁およびそで壁が柱両側面に付帯する柱部材を1/2スケールに縮小した試験体4体について行った。試験体は既存低層鉄筋コンクリート建物に包含される部材を想定して、普通コンクリート、鉄筋を使用して製作し、建築研究所強度試験棟に搬入した。反力床に基礎スタブを固定し、建研式加力装置を用いて正負交番繰り返し載荷実験を行った。試験体は腰壁およびそで壁つき柱試験体2体および腰壁つき柱試験体2体とし、壁厚は柱幅の1/4または1/3とした。腰壁およびそで壁はダブル配筋とした。各試験体の終局せん断耐力については壁谷澤らが提案する分割累加式、曲げせん断耐力については耐震診断基準に示される全塑性理論に基づいて精算し、腰壁を完全剛域とした仮定した場合には曲げ破壊が計算上やや先行するように設計した。試験体の上部スタブには両端部には水平ジャッキ2台、載荷装置の鉄骨梁には鉛直ジャッキ2台が接続することで、試験体を水平方向および鉛直方向に加力した。反曲点高さはそで壁つき柱内法高さの中央になるように左右の鉛直ジャッキによって付加モーメントを調整した。軸力は柱中心位置に作用させる固定軸力とし、軸力比はそで壁部分を除く柱コンクリート断面に対して0.2とした。実験時には基礎スタブからアルミアングルで製作した計測フレームを設置し、各柱の水平・鉛直絶対変形のほか、柱、そで壁、腰壁部分において曲率およびせん断変形を計測した。また、主筋およびせん断補強筋にひずみゲージを添付して鉄筋降伏状況と試験体のひびわれ損傷状況の比較を行った。各サイクルの荷重ピークおよび除荷時にひび割れ幅の計測を行った。なお、繰返し載荷による腰壁端部の圧縮破壊を防ぐため各変形ピークにおける載荷サイクルは1回とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度までの研究では静的漸増載荷実験を実施し、本研究目的である腰壁およびそで壁つき柱部材の可撓長さを検討するためのデータ(試験体4体)を取得することができた。試験体は曲げ破壊型であり、試験体設計時の想定の通り、(1)腰壁が付帯したことによる部材耐力・終局変形角の変化、(1)壁厚さにより剛域可撓長さが変化することが実験的に検証できた。これにより、研究目的における平成23年度の1)および平成24年度の1)が達成されており、当初の研究計画よりも研究状況は進んでいる。(研究計画を一部変更して平成23年度に前払支払請求書を提出しているため、試験体パラメータについては変更されている)。取得した実験データに関しては荷重‐変形関係のみ整理されているため、当初の研究計画の通り、平成24年度に損傷過程(ひび割れ伸展過程)、鉄筋ひずみ、曲率等の詳細なデータについて整理し、剛域(可撓長さ)について検討する予定である。また、実験結果についての理論的な解釈についても当初の研究計画の通り、解析的検討を通じて腰壁およびそで壁つき柱の可撓長さの算定方法に壁厚さ壁補強筋比の影響を考慮した式を提案する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は前年度実施した静的載荷実験結果について実験データを取りまとめるとともに、断面解析および有限要素モデルを用いた解析的検討を実施する。平成24年度1)実験結果の解析的考察については試験体の荷重-変形関係のみならず、(1)残留ひび割れ幅と変形角の関係、(2)部材曲率と終局変形角の関係、(3)鉄筋降伏状況等について整理する。また、平面保持を仮定した断面解析を実施し、腰壁およびそで壁つき柱部材の等価な可撓長さについて検討する。コンクリートの修正圧縮応力場理論に基づいたAxial Shear Flexural Interaction Modelにより各柱部材の終局限界変形が推定可能であるか検討する。平成24年度の2)柱剛域に与える影響についての理論的解釈の部分については有限要素法に基づいた解析的検討を実施する。試験体はコンクリートおよび鉄筋材料試験の荷重変形関係を用いて適切にモデル化し、荷重変形関係および鉄筋降伏状況よりその妥当性を検証する。また、パラメトリック解析を実施し、壁厚や境界条件が剛域(可撓長さ)に与える影響について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に当初計画していた目的(そで壁および腰壁つき柱部材の剛域長さの検討)を達成しうる静的漸増載荷実験データを取得することができたため、平成24年度予算は試験体製作作業等に使用せず、解析的検討のために使用する。特に採用時の研究計画には無かった有限要素法を用いたパラメトリック解析による検討を追加しているため、主にこれらを実施するための消耗品等予算(PCまたは解析プログラム等 購入費用)として使用する。また、研究成果について発表するため、当初の予算項目として計上している国内研究発表および第15回世界地震工学会議の出席・論文発表のための旅費として使用する。
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