研究課題/領域番号 |
23760541
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研究機関 | 独立行政法人建築研究所 |
研究代表者 |
鈴木 淳一 独立行政法人建築研究所, 防火研究グループ, 研究員 (10453846)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 鋼架構 / 火災 / 再使用性 / 熱応力 / 機能維持 |
研究概要 |
建築物の耐火設計では、火災時における部分架構・部材の崩壊温度を終局耐力に基づき推定している。一般的な設計では、火災時の構造体の崩壊に対する安全性については検討するが、火災後の再使用性までは十分に検討しておらず、崩壊を免れた構造体の損傷・再使用性等を設計段階に想定できてない。本研究では、火災後における構造体の機能維持・再使用性と損傷状況の関係を明らかとするため、火災時の加熱・冷却過程における鋼架構の力学的挙動を解析・実験的検討に基づいて分析し、定量的に把握することを目的とする。本年度は部材実験に先立ち、架構の加熱冷却過程における残留変形および残留応力、火災後の地震時における架構の構造特性を把握するために有限要素法による弾塑性熱応答解析を行った。解析対象架構は12層3スパン(階高4 m、スパン長10 m)とし、フロアモーメント法により設計用地震力を伝達できる必要最小断面の部材を配したものである。解析において想定する火災は内側スパン火災、外側スパン火災等とした。火災の程度として、加熱される部材の最高履歴温度(Tmax)を、100℃から崩壊の直前温度の範囲で100℃刻みで設定した。また、部材温度をTmaxまで温度上昇させた後、常温まで下降させ、温度変化時における熱応力、塑性化、変形の状況を把握した。その結果、加熱を受ける梁の塑性変形量が大きいほど残留応力も大きくなること、加熱を受ける架構を簡略化した、構造モデルにより、塑性変形を含む加熱冷却過程の荷重変形関係を概ね追跡できることが明らかとなった。さらに、火災を受けた架構に対して、地震を想定したプッシュオーバー解析を行った結果、Tmaxの上昇よって残留応力が増加するため水平剛性は低下するが、保有水平耐力は大きく変化しないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加熱・冷却を被る部材実験実施に先立ちに、本年度、解析的検討として架構内の部材の熱応答に関する知見を蓄積できたことは大きな成果であった。解析結果に基づき、火災加熱を受けて、その後常温に至るまでの架構内に組み込まれた部材の支持条件・荷重条件をモデル化して、部材要素実験に供する試験体を製作した。試験体は、角形鋼柱を模擬した断面径100mmの鋼部材である。部材要素実験のシステム構築に関して、加熱・冷却過程を再現する時間-温度関係、部材の端部拘束条件等、力学的挙動を把握するための実験装置(載荷加熱試験装置)のキャリブレーションを実施しており、実験実施に向けた準備が概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に引き続き、熱応力を受けて塑性化する柱・梁鋼部材および接合部を含む梁部材の加熱過程および冷却過程における曲げ座屈、局部座屈、接合部破断等の影響を含む力学的挙動を実験・有限要素解析の両面から明らかにする。角形鋼柱の加熱・冷却実験結果を踏まえ、平成24年度中頃から接合部・鋼梁の加熱・冷却実験を行う。H24年度後半から、解析的検討として3次元シェル、ソリッド有限要素等を用いて部材を再現し、実験における鋼梁・接合部の力学的挙動を有限要素法を用いた火災応答解析によって把握する。解析パラメータは、部材断面内温度および温度分布、加熱・冷却条件(昇温・冷却速度)、熱応力と残留応力に対応する荷重条件(軸力、曲げモーメント等)、部材の拘束条件、鋼材の幅厚比とする。H25年度には一連の実験・解析結果に基づき、部材の挙動を定式化するための構造モデルの構築し、部材の構造特性、荷重条件、加熱・冷却条件等に応じた、部材の再使用限界温度、最大塑性変形量を推定するための理論的検討を進める。また、部材の再使用限界温度を理論的に推定する手法の構築を試みる。部材の再使用限界温度推定法を架構に対して適用し、解析結果と比較することにより、その妥当性を検証する。さらに、現在の耐火設計において、支持条件・荷重条件、限界状態等の点で、十分な性能整合のとれていない再使用限界温度、耐火試験における崩壊温度と耐火設計指針に基づく架構の崩壊温度の関係を相互に換算するための理論的分析を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、研究費の大半を鋼試験体作製費用・実験消耗品に充当する。試験体の発注時期は7月頃を予定している。また、数値解析を実施することから、廉価な数値計算用コンピュータ数台を購入する予定である。謝金については計上しないこととする。旅費は主として、国内の移動費である。その他は、学会等への参加費等である。
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