研究課題/領域番号 |
23760546
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
吉田 聡 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (80323939)
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キーワード | 建物間エネルギー融通 / 熱源機器採用傾向 / 建物用途 / 建物規模 / 省エネルギー |
研究概要 |
まず、空気調和・衛生工学会「竣工設備調査用紙一覧」(1998~2012年度)をもとに、建物用途、建物規模ごとに熱源機器の採用傾向分析を行い、GHPやビルマルチ等の個別熱源の採用割合が大きいが、建物規模が大きくなると中央熱源方式の採用割合が増加すること、中央熱源方式では吸収式冷凍機の採用割合が大きいこと、特に医療、宿泊用途建物で大きいこと等を明らかにした。 この結果をもとに、吸収式冷凍機を主とする熱源システム、HPチラーを中心とする熱源システム、電動ターボ冷凍機を主とする熱源システムの3つの標準的な熱源システムモデルを設定し、既開発の「建物間エネルギー融通簡易評価シミュレーションモデル」の改良を行った。 次に改良を行った「建物間エネルギー融通簡易評価シミュレーションモデル」を用いて、建物用途4種類(医療、商業、業務、宿泊)、建物延床面積、熱源システム種をさまざま変えて2棟間の建物間融通の効果についてシミュレーションを行った。その結果、融通される側の建物(B)の熱源システムが部分負荷効率の低いHPチラーを中心とする熱源システムの場合、融通する側の建物(A)の更新した効率の高い熱源機器の余力を生かす効果が大きく表れた。また、建物用途の分析結果として、融通を受ける側の建物用途が医療用途の場合、医療施設の熱負荷が大きくかつ負荷変動も小さいことから、融通する側建物の熱源機器の負荷率向上をもたらし、省エネ効果が大きく表れる傾向にあることが明らかになった。 また、採用傾向の高い熱源機器同志での熱融通では、効果は大きく表れない結果となった。この点については、もう少し詳細な分析が必要であることから、次年度に検討を行うこととする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、東日本大震災およびその後の系統電力の供給力不足、夏季の電力使用制限令下での建物の節電対応、地域熱供給事業における対応などの調査を重点的に行ったことから、既存建物の熱源機器採用傾向の分析、建物用途や規模の違いによる標準熱源システムの設定にまで至らなかったが、2年目である2012年度は、空気調和・衛生工学会「竣工設備調査用紙一覧」をもとに既存建物の熱源機器採用傾向の分析、建物用途や規模の違いによる標準熱源システムの設定を行い、これを踏まえた既存の「建物間エネルギー融通簡易評価シミュレーションモデル」の改良、ケーススタディを当初の予定通り実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
まず今年度のケーススタディで明らかになった「採用傾向の高い熱源システム同士の融通では効果が大きくない」という結果について、詳細に分析を行いその理由についての考察を行う。 次に、平成24年度の研究成果に基づき、具体的に横浜市の実在市街地における建物間エネルギー融通導入効果の検討を行い、建物間エネルギー融通による省エネルギーポテンシャル、省CO2ポテンシャルを明らかにする。 また、研究全体を振り返り、これからのスマートエネルギー・低炭素社会における「街区エネルギーコミュニティ」の役割等を再定義し、あるべき将来像を提示するとともに、技術的課題、社会(制度・政策)的課題について整理する。 最終年度であるため、研究を総括し、報告書としてまとめ公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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