スマートエネルギーに関する国内外の技術動向・社会動向に関して文献調査、実地調査を行い、「街区エネルギーコミュニティ」の役割として、「街区の省エネルギーと低炭素化及び災害時の機能維持のための電源確保を関係主体間連携の中で実現すること」と定義した。 次に、既開発の「建物間エネルギー融通簡易評価シミュレーションモデル」を、非常時の電源確保の観点も加味して熱融通だけでなく電力融通についても評価できるように改良した。また、これを用いて横浜市、東京都区部における建物間エネルギー融通導入効果を概略推計した。その結果東京都全域の延べ床面積比率でみた導入ポテンシャルは15.6%、熱需要量比でみた導入ポテンシャルは25.7%であり、横浜市の場合はそれぞれ10.3%、8.6%であった。 次に、文献調査をもとに中央熱源方式の熱源機器採用傾向を分析し、既開発の「建物間エネルギー融通簡易評価シミュレーションモデル」を改良し、採用傾向の高い吸収式冷凍機を主とする熱源システム、HPチラーを主とする熱源システム、電動ターボ冷凍機を主とする熱源システムの評価ができるようにした。これ用いて、モデル分析をした結果、部分負荷効率の低いHPチラーを中心とする熱源システムの場合、融通による稼働負荷率の向上により効果が大きく表れた。また、採用傾向の高い熱源機器同志での熱融通では、効果は大きく表れない結果となった。 この点については最終年度に、検討に用いた「建物間エネルギー融通簡易評価シミュレーションモデル」の精査、結果の詳細な分析を行い、建物間エネルギー融通を実施する場合の必要条件である中央熱源方式採用の建物においては、どの建物用途でも吸収式冷凍機の採用傾向が高く、吸収式冷凍機の場合には建物間エネルギー融通により負荷率が向上しても機器効率の向上が小さいことから省エネルギー効果が小さいということを確認した。
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