研究課題/領域番号 |
23760550
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 容平 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40448098)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生活行動 / エージェントシミュレーション / 都市エネルギー / 交通 / 実態調査 |
研究概要 |
平成23年度は大阪大学下田研究室ですでに開発済みである家庭部門、業務部門のエネルギー需要モデルを拡張するとともに、次の二つのモデルを新規に開発して、都市圏モデルとして統合した。(1) 都市圏人間行動モデルNHK放送文化研究所による生活行動調査結果に基づいて確率的に住宅に居住する世帯構成員の行動を決定する行動モデルを開発した。さらに、多数の世帯を想定したうえで、各世帯の居住者の生活行為を決定し、行動モデル上での「外出時」に割り当てられた人間に対して旅客交通利用行為、業務施設の滞在行為を割り当て、それを対象世帯全体で集約し、都市圏の人間流動をデータ化するモデルを開発した。ただし、今年度はすべてのモデルの整合性を確保するには至らなかった。この点は来年度の課題とした。(2) 旅客交通部門モデル近畿圏を対象としたパーソントリップ調査の結果に基づいて旅客交通のエネルギー消費、CO2排出量を推計する旅客交通モデルを開発した。本モデルの推計結果と、すでに大部分の開発が終了している住宅部門、業務部門の推計結果を組み合わせることによって、産業・運輸を除く都市活動に伴うエネルギー消費量、また、都市圏における都市機能、人口の空間配置の変化・変更によってもたらされる影響・効果を定量化することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近畿圏(京都府、大阪府、滋賀県、和歌山県、奈良県、兵庫県)における都市エネルギー(都市居住・都市活動に起因するエネルギー消費,民生家庭・業務部門、旅客交通部門)を対象とし,部門間の整合性が取れたエネルギーモデルを開発することを目的としていた。今年度は計画通り3部門のモデルを開発することができた。 ただし、モデル間の整合性を担保するには至っていない。整合性の担保のために都市圏の人間流動を表すパーソントリップ調査の結果や公共交通機関利用者数、交通量などのデータに基づいて行動モデルのインプット情報である時刻別行為確率分布を補正することによって達成されると考えており、来年度はこの点について重点的に検討を進める予定である。 また、家庭部門の行動モデルについて、モデルの課題点とその課題解決に必要なデータをそろえることができた。具体的な課題は入力データである生活時間データ、計算アルゴリズムにかかわるものがある。入力データとしてNHKが発表している生活時間調査データを用いているが、大量のサンプルに基づいて作成された統計情報であるため、一つの世帯に当てはめるにはデータの分散が大きすぎる。計算アルゴリズム上の課題としては、家族内の時間共有を考慮できないこと、行為の遷移回数が実態とかい離していることが挙げられた。これに対して、総務省統計局が行っている社会生活基本調査の個票データを入手し、追加して生活時間調査を行った。これらを用いることによって課題解決策の検討が可能となると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は都市圏人間行動モデルの精度検証を行う。精度検証には実存住宅を対象とする計測データ用いる。計測は主要機器、照明等の主要系統別に行われるもので、このデータから居住者の行動を抽出する方法論を確立する。そのうえで、昨年度開発した都市圏人間行動モデル実世帯の生活行動の挙動を正確にモデル化しているかを確認する。確認には二百戸程度の住宅のエネルギー使用データ、総務省統計局による社会生活基本調査個票データ等を用いる。 加えて、建物類型に基づく近畿圏エネルギーモデルを用いて、次の検討を行う。■燃料種や部門、地域、建物用途、人員・世帯属性などの区分に対応するエネルギー消費を定量化し、エネルギー消費の構造を明らかにする。特に、一人当たりのエネルギー消費量およびCO2排出量を推計し、地域間比較を行う。■単身居住、家族との居住、子供の別居、同居者の死別など世帯のライフステージの変化を想定し居住地や住宅形式(戸建住宅あるいは集合住宅)などの選択がエネルギー消費に及ぼす影響を明らかにする。■将来想定される人口構造、建築ストック構成・分布、技術水準に関するBAUシナリオを開発し、将来におけるエネルギー消費量、CO2排出量を予測する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、平成23年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。次年度の研究費の使用計画は以下の通りである。(1) 現地調査・情報収集に用いるノートパソコン、書籍(生活行動、都市圏での人口分布、都市圏形成などに関するもの)、生活行動に関する資料・データ・論文を購入する。(2) 今年度島根県で行われる生活時間に関する国際会議、中国で行われる建物性能に関する国際会議に参加し、情報収集及び成果発表を行う。このために旅費、学会参加費を支出する。このほか国際ジャーナルに論文を投稿するため、論文の掲載料を支出する。(3) 生活行動モデル化手法、データに関する情報収集を行うため、旅費を支出する。(4) データ収集を行ったデータの整理のためにアルバイトを任用する。
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