本研究は、近畿圏における都市エネルギー(都市居住・都市活動に起因するエネルギー消費,民生家庭・業務部門、旅客交通部門)を対象とし、部門間の整合性が取れたエネルギーモデルを開発することを目的とした。民生家庭部門、業務部門のエネルギー需要モデルは、それぞれ住宅、業務施設を推計単位とし、計算対象地域における住宅、業務施設ストックを複数の類型に分類し、類型別に類型を代表する住宅、業務施設モデルを作成する。これを代表モデルと呼び、代表モデルを対象とするエネルギー需要シミュレーションを行い、世帯当たり、延床面積当たりのエネルギー需要原単位を算出する。最後に、原単位と各類型の世帯数、延床面積の積和を行い、計算対象地域全体のエネルギー需要として定量化する。旅客交通部門については、パーソントリップ調査データに基づいて旅客交通需要を算出し、単位トリップ当たりのエネルギー需要とトリップ数の積和によりエネルギー需要を定量化する。本年度は3つの部門における整合性を確認したほか、その結果に基づいてモデルで使用するデータベースの調整を行った。まず、社会生活基本調査で行われている生活時間調査の個票データと京阪神都市圏パーソントリップデータに基づいて、都市圏交通流動、建築・住宅内の滞留が整合を確認した。この結果、特に業務施設における施設利用状況、機器の稼働状況の修正が必要であることがわかったため、データベースの修正を行った。また、業務部門エネルギー需要モデルでは昨年度までに事務所、宿泊、医療、商業施設のモデルを開発済みであったが、新規に飲食施設、文教施設のエネルギー需要推計機能を追加した。最後に、モデルを用いて近畿圏のエネルギー需要を推計するととともに、エネルギー消費機器の効率向上、省エネルギー手法の普及、技術代替によるエネルギー需要、CO2排出量の削減効果を推計した。
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