近年、登攀型の壁面緑化植物として急速に普及しているノアサガオを供試植物として、壁面緑化による水消費量の算定方法を提案した。都市域にあるRC造建築物の南側壁面を実験対象として、6階から7階部分に登攀型の壁面緑化「緑のカーテン」を設置して、植栽用のプランタ土壌を含めた植物体の水収支を調べた。 2011年8月19日から10月2日までの期間、ノアサガオを植栽面の面積に対して平均で約11倍の葉面積となる程度に繁茂させた。この壁面緑化物の水消費量の日平均値は、1日あたり18.4mmであった。気象条件のみに支配される基準蒸発散量に対する水消費量の比を水消費量率とした時、同期間における水消費量の最大値は15程度だった。水消費量率の最大値15に対する日々の水消費量率を標準水消費量率として、日平均風速、日平均土壌体積含水率、日積算壁面日射量、対地葉面積指数の環境因子を説明変数とする推定モデルを構築した。モデルによる推定値の実測に対する絶対平均誤差はMAE=0.061となり、日々の水消費量に対するモデルの絶対平均誤差は6.1%程度と良好な結果が得られた。 8月の福岡市の市街化区域を対象として、点在する公園緑地と市街化区域を含めた定時気温観測を実施し、地理情報システムを活用して、ヒートアイランドの形成に関連が深い土地利用条件を数値化し、気温分布との関連について調べた。昼間最高気温は海風が卓越する気象条件下で地点間のコントラストが大きく、市街地を南北に流れる那珂川の河口から遠く、また周辺の市街化率が大きくなる程、高い傾向にある。しかし、観測点が緑地および河川上に位置する場合、その上昇は抑えられる。夜間最低気温は海岸から遠い場所や緑地で低くなり、緑地面積が大きいほどその傾向は顕著となる。昼間最高気温の場合よりモデルは頑健であり、緑地周辺における低温が局所的かつ顕著に出現していることを反映していた。
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