研究課題/領域番号 |
23760554
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
白澤 多一 大妻女子大学, 社会情報学部, 助教 (40423420)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | CFD / 街区空間 / 風通し |
研究概要 |
本研究の目的は、数値流体力学を用い、街区の歩行者レベルの通風・換気に大きな影響を及ぼし、また街区を特徴付けるパラメータと考えられる屋根形状、建物間隔と街区内の流れの構造の関係を分析・考察することである。そして、この分析を通じ、都市・屋外空間の通風換気設計のための基礎的な資料を提供することである。 研究計画に基づき、今年度は、計算負荷の比較的小さいk-εモデルを用い、陸屋根、切妻屋根、片流れ屋根の住宅をそれぞれ整列配置したモデル都市を対象とした解析を行った。なお、切妻屋根、片流れ屋根については主風向に対し、棟が平行に位置する場合と直交する場合についても検討した。この解析結果に基づき、屋根形状、主風向の違いが歩行者レベルの平均風速分布、平均濃度分布に与える影響を分析した。 さらに整列配置と千鳥配置の2つの異なる建物配置のモデル都市を対象としたLarge Eddy Simulation による詳細な数値流体解析を実施し、各種乱流統計量を取得した。その結果を用い、都市空間内の運動エネルギーの輸送方程式、乱流エネルギーの輸送方程式中の各項の影響度を調べるために、運動エネルギー収支分析を行い、運動エネルギーの収支構造及び運動エネルギー散逸率を算出・分析した。今回の計算ケースでは、建物高さが一定の場合、整列配置から千鳥配置に変更することで、都市空間でのエネルギー散逸率の総和が増加することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究の初年度にあたる平成23年度は、(1)比較的計算負荷の小さいRANSモデルを用いた解析を実施し、屋根形状が歩行者レベルの平均風速や平均濃度分布に与える影響について把握することと(2)Large Eddy Simulation のプログラムを改良し、モデル都市の解析を行い、風洞実験では測定が困難なフラックスを中心に、乱流統計量を取得し、粘性消散率を算出することを計画していた。 (1)については、k-εモデルを用い、屋根形状の異なるモデル都市を対象とした解析を実施し、屋根形状、主風向の違いが歩行者レベルの平均風速分布、平均濃度分布に与える影響について考察を行っており、当初の計画通り研究が進んでいる。 また(2)については、建物配置の異なる街区を対象とし、Large Eddy Simulation による詳細な数値流体解析を実施した。計算ケース数は十分ではないものの、解析を実施したケースについては、風洞実験では測定が困難な各種乱流統計量を取得することができた。また都市空間内の運動エネルギーの輸送方程式、乱流エネルギーの輸送方程式中の各項の影響度を明らかでき、おおむね当初の計画通り研究が進んでいる。 以上より、現在までの達成度としては、おおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき、3年間の研究の2年目にあたる平成24年度は、・平成23年度に得られた Large Eddy Simulationの結果を用い、流れ場の様相を図化し、詳細に観察する。またその結果をもとに必要に応じて、新たな計算ケースを設定し、解析を実施する。・平成23年度に改良を加えたプログラムをさらに平面平均操作が行えるよう改良し、運動方程式における分散効果を算出し、考察する。・平成23年度は温度の条件を考慮してこなかったが、不安定条件のCFD解析を行い、街区内に形成される流れ場の性状と汚染物質の輸送構造について整理する。 以上の3つについて、研究を進めることを計画している。Large Eddy Simulation による詳細な数値流体解析を実施し、十分な統計量を取得するには長い計算時間が必要となる。 そこで現在使用している自作のプログラムだけでなく、最近使用が増えているオープンソースのソフトウェアの利用した計算の高速化も検討したい。また解析対象、分析の内容に応じ、比較的計算負荷の小さいモデルを用いた解析の実施も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は社会情勢から研究費が分割交付された。本研究課題の当該年度の主要な購入予定物品であったワークステーションは、予算の大半を占めることから、全額交付されたのち、業者との詳細な仕様の打合せを行ったことと構成部品の後継品のリリースの時期の関係もあり、購入時期が当初の予定よりも先延ばしになった。そのため、その他の物品購入等も先送りした結果、次年度に使用する予定の研究費が生じた。なお、翌年度に先送りにしたデータのバックアップ用の消耗品等の予算は次年度購入予定のPCのハードディスクドライブを拡充する予算とし、当初の目的である解析データのバックアップに対応する予定である。 そのほかの次年度の研究費は、当初の計画通り、物品費として、解析データの可視化に使用するPC、情報収集等のための学会参加費を中心とし、研究補助、翻訳・校閲の人件費・謝金、印刷費等のその他の経費として使用する計画である。
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