研究課題/領域番号 |
23760555
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小林 謙介 東京理科大学, 理工学部, 助教 (30581839)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 二酸化炭素排出削減 / 木質バイオマス / ライフサイクルアセスメント / 低炭素社会 / 建築・住宅 / 木材 |
研究概要 |
・炭素固定等に関する評価手法の構築 時間要素を考慮した炭素固定評価手法の構築を試みた。単位量当たりの木材の利用にかかわる評価手法に焦点を当て、炭素固定効果を算出するとともに、建築物また、その後の再資源化などにおける利活用方法が評価結果に与える影響などについてケーススタディを行った。成果は日本建築学会(発表者:野田)で発表した。・マテリアル・炭素フローの構築 国内のマテリアルフローについて、すでに構築していた2005年だけではなく、2000年、2010年分も構築し、年次変化に関する分析も行った。同様に、各年の炭素バランスについても算出した。その結果、木材消費量や炭素放出・固定量は年々減少傾向にあるが、発生構造(プロセスごとの発生割合)は大きく変化していないことなどを明らかにした。炭素の固定量では、製材として利用される木材の効果が最も大きいことなどを定量的に示した。成果は日本LCA学会(発表者:野田)で発表した。併せて、環境負荷評価におけるインベントリ分析での環境負荷の配分方法に関する課題について、日本建築学会(発表者:久保村)で発表した。・森林資源や木くずの利活用方法と処理に伴う環境負荷評価 過去の研究蓄積も含め、これまでに実施してきた30程度の施設の調査結果をもとに、育林・製材などの各プロセスにおける課題の整理を行った。これらの情報を踏まえながら、再資源化・長寿命化・製造効率などの変化による炭素固定効果などについて、試算的にケーススタディを行った(ともに次年度の建築学会で発表予定)。その結果をもとに、今後、具体的な提案を行っていくための土台となる情報が整理できたほか、評価における課題なども捉えることができた。また、それらの成果を踏まえた、環境負荷低減効果をとらえるためのケーススタディを試算的に実施した(次年度の建築学会で発表予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた1年目に実施すべきとしていた、評価手法の構築、マテリアルフロー・炭素フロー分析などは、十分に達成できていると考える。 評価手法の構築は、固定期間を考慮した評価手法を構築し、日本建築学会の大会で発表でき、おおむね当初の目的を達成できている。我が国における木材の受給量は年によって大きく異なるため、マテリアルフロー・カーボンバランス分析においては、2000年、2005年、2010年の推計フローを構築した。また構築されたフローを分析し、木材ライフサイクルにおける各プロセスでの炭素発生構造やその年次変化などを定量的に明らかにすることができ、目標を十分に達成できた。 実態調査については、育林・製造・処理などの木材ライフサイクルの各プロセスについて、これまでの研究蓄積を含めて計約30の施設調査を行った。その成果をもとに、定性的ではあるが、環境負荷削減技術・その効果・課題などの視点で情報を整理することができた。ただし、育林・合板などのプロセスにおける実態調査・情報収集は、追加で調査を行ったほうがよいと考えており。次年度、複数の施設に対して調査を行っていきたいと考える。 次年度に予定していた、木材利活用による環境負荷削減のための方策提案に向け、これまでの分析結果をもとに、試算的にケーススタディを行った。製造技術の向上(製造歩留まりの向上)、再資源化率の向上、建物の長寿命化などの視点から効果を定量的に分析でき、長寿命化による効果が大きい可能性が高いなどの知見を得ることができた。これらの分析については、やや前倒しで検討が進められていると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
・実態調査 本年度情報を整理した結果、さらなる情報収集が必要と考えている、育林・合板製造などのプロセスにおける実態調査を実施し、具体的な提案に向け、実情を踏まえたシナリオを設定するための情報整理をより十分なものとする。具体的に複数の調査対象候補を検討しており、それらの施設での環境負荷削減技術・課題などについて調査する予定である。・効率的な資源循環・炭素固定を実現するための木材利活用方法の提案 これまでに行った試算の結果や、育林・製造・処理などの木材ライフサイクルにおける各プロセスの実態調査結果等を踏まえ、用材別・材種別に木材のライフサイクルで最も資源利用・炭素固定効果の高い利用方法を、ケーススタディを通して定量的に分析する。・現状の森林資源量から見た建築における環境負荷低減可能性の提案 すべての検討結果を踏まえ、5000万m3ともいわれる国内の供給可能素材の建築分野での利活用可能性について、複数のシナリオを想定して定量的に環境影響分析を実施する。なお、評価結果の解釈については、産総研や森林総研の研究者らに意見を求めつつ、十分な議論のもと実施したいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
・実態調査 育林や合板などに関する実態調査のため、関東や中部地方の施設における実態調査を計画しており、調査にともなう機器などの費用・旅費などとしての使用を考えている。・成果の公表 次年度は本課題の最終年度であるため、建築学会・LCA学会などにおける学会発表などによる成果の公表なども行っていきたいと考える。・その他 環境影響評価の精度向上のためには、より精度の高いデータの入手なども必要不可欠と考えており、それに関連する統計資料などの購入なども考えている。
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