研究課題/領域番号 |
23760556
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
堤 仁美 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (00409690)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 咳 / 感染症 / リスク低減 / 建築・設備 |
研究概要 |
新型インフルエンザをはじめとした感染症の流行の際には、患者を診察する医療従事者への感染が大きな問題となる。医療従事者は、診察・治療のため患者付近の汚染濃度の高い領域に曝露される。特に患者の咳やくしゃみによるウイルスの飛散は医療従事者にとって大きな脅威である。また、このような場合には、診療体制にも支障が出ることが予想されており、安全性が確保された感染対策診療施設を必要数確保するためにも、感染への対策が急務となっている。本研究では、医療福祉施設における感染症リスクを低減する建築・設備を提案することを目的としている。本研究を遂行するにあたり、既往研究の調査や社会情勢などの調査を行い、本研究の位置づけ、研究の方向性を確認した。 実際の患者の咳によるウイルスの飛散・感染を再現性を持って模擬するため、模擬咳気流発生装置を開発した。測定精度の確認のため、咳流量・気流形状などについて人間の咳との比較を行った。 診察室を想定した実験室において、開発した模擬咳気流発生装置を用いて咳気流を発生させ、トレーサーガス濃度測定による感染リスク評価実験を実施した。本実験は、患者の咳を模擬して模擬咳気流発生装置から放出したトレーサーガスの濃度を、医療従事者(医師、看護師)にみたてた呼吸機能を設置したサーマルマネキン(ブリージングサーマルマネキン)の呼吸域で測定する。トレーサーガスとして二酸化炭素を用いた。室内環境条件として、プッシュプル装置などの局所気流発生装置を用いて異なる気流制御を行った条件、人体位置を変更した条件、隔壁やマスクを使用した条件を設定した。人体配置を直接咳気流に当たらないようにすることや、プッシュプル装置のような局所換気の有効性、その中でも特に間に障害物がなく気流が形成できる横方向と斜め方向のプッシュプル気流によって大きな効果が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通り進捗している。研究成果は学会などで発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
病室のような広い空間における咳気流の伝搬特性を把握する必要がある。このため、模擬咳気流発生装置の改良を行い、トレーサーとしてパーティクルを用いることができる、人間の口腔形状を模擬できるものにする必要がある。改良の際には、人間の咳との比較を行い、測定精度の確認を行う。 また、診察室や病室において感染対策のための環境制御を効果的に行うため、診療中の医療従事者や患者の動作範囲を測定し、感染リスクとなる汚染物質の発生場所と対策の必要な場所を明確にする。重症度の異なる症状を想定し、通常行っている外来での診察と同様の診察・診療行為を行う。これらの録画画像より、3次元ビデオ動作解析を行い、診療行為中の医療従事者と患者の動作範囲を明確にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
模擬咳気流発生装置の精度測定を行うための実験費用、医療従事者・患者の動作解析測定実験費用、これまでの研究成果発表費用。
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