1.最終年度に実施した研究の成果 ■屋外実験によるコケの熱・水収支特性の把握:コンクリート上スナゴケ緑化材試験体を対象に、建物屋上での屋外実験を通して、前年度までに確認された結露・吸湿現象を引き起こす部材の把握に取り組んだ。部材別の試験体で検討した結果、コンクリート平板および、コケを取り除いた緑化基盤において結露と吸湿が確認された。断熱材(スタイロフォーム)については結露のみ確認された。吸湿について、コンクリートの吸湿量が大きいことが確認された。スナゴケ単体の吸湿の有無については本研究期間内では明らかとすることができず、今後の課題としたい。 2.研究期間全体を通じて実施した研究の成果 ■フィールド調査と暴露試験を通した人工被覆面上のコケの自生条件抽出:大学構内(石川県野々市市)において、人工面に自生するコケを対象に、フィールド調査によりコケの種別と自生形態を定量的に把握した。また、コケ種苗を吹き付けた保水性モルタルによる3年間の暴露試験より、コケの自生・繁茂について、モルタルの単位容積質量、凹凸、浸水の有無、白華、気象条件(日射量、降雨量等)を検討した結果、保水性が共通する条件であることが確認された。 ■屋外実験によるコケの熱・水収支特性の把握:①コンクリート上で自生するコケ(日陰)、②庭園材(スギゴケ、日陰)、③屋上緑化材(スナゴケ、日向)の3試験体を対象に、屋外実験により、夏季および年間を通した熱・水収支特性を把握した。スナゴケ試験体について、気乾状態に近づくにつれて午後~明朝に結露および吸湿が発生することを確認した。 ■心理評価手法によるコケのわび・さびへの影響把握:面談調査法であるPAC分析により、コケ植物と「わび・さび」の関係を把握した。また自由連想とインタビューを用いた心理評価手法により、わび・さびを感じる空間に対する認知構造を調査した。
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