ドイツにおけるミティゲーションの制度に関する調査・分析を中心に、一部自治体レベルの運用実態の調査まで含めて、文献調査及びヒアリング調査を中心に行った。明らかにした概要は以下のとおりである。 ドイツにおけるミティゲーション制度は、開発に際して自然環境への侵害行為に対する代償措置を行うものとして、開発のための策定される地区計画(BPlan)を契機として適用されている。基本的にほとんどすべての開発がその対象となる点が特徴的であり、一部の貴重な自然環境への侵害を対象としているわけではない点がアメリカと異なる。 評価の方法は、希少種・土地・水・気候等への影響をポイント化して行うという定量的手法と、叙述的に評価する定性的手法と、自治体によって異なるが前者が多いようである。なお、この定量化手法に対しても、異議はほとんど出されていない。 開発地でその代償をすべて行うことができない場合には、開発地外で、場合によっては開発者以外が主体となって行うことになる。その場合、開発者は受託者に対してポイントに応じた金銭を支払うことになる。ポイントあたりの価格は市場経済に委ねられている。デュッセルドルフ市においては、市有地は市の開発の際のミティゲーション用地としてリザーブされているため、通常の開発の代償措置は民間同士の契約で行われ、それを市当局が承諾する、という形で行われる。その場合、その旨(通常30年間の維持管理義務負担)が土地台帳に記載され、第三者効を有する。農家または林業家が受託者となる場合が多く、その意味ではこのミティゲーション制度は農林業支援策という側面を有しているともいえる。なお、ドイツにおいてはミティゲーションを専門に取り扱う民間企業はほとんど存在しないが、アメリカにおいてはそれが「ビジネス」として成立している点が特徴的である。
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