本研究では、昭和前期の「遊覧都市」で策定された都市計画の特質について、全国的な動向と事例の検討により明らかにした。1930年代を中心に観光施策を活発化させた地方都市においては、都市計画法の適用を受けるなかで、遊覧・行楽客の受け入れに対応した空間計画が策定された。観光地への到達や風景享受のための街路計画と、社寺や景勝地等を取り巻く緑地を保全するための風致地区の設定が基本的手法であり、大正期に導入された「公園系統」の計画手法を適用し、公園や社寺・景勝地等をネットワーク化する事例も見られる。同様の考え方は地方計画においても導入され、広域的な交通網形成と緑地保全による観光圏構想の萌芽が見られた。
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