研究課題/領域番号 |
23760566
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 純 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 研究員 (80584408)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高齢社会 / 都市計画 / コミュニティケア |
研究概要 |
(1)柏市における介護保険給付データ分析:まず地区別に介護需要の発生率に違いがあるのかどうかを調べたが、概ね9~12%前後で推移しており、地区別の違いがあるとは言えないことが分かった。そこで要介護3~5以上で、在宅生活を送る方のデータを世帯類型、収入類型、持家・借家別で分析したところ、世帯類型(一人暮らし、夫婦のみ、家族あり)による違いが大きいことが分かった。特に家族の居る世帯は、デイサービスやショートステイなど昼間の居場所と夜の居場所を自宅外に求める傾向がつよく、結果的に家族の都合で、特養や老人ホームなどに入居させられる場合が多いことなどが分かった。(2)海外調査:海外調査として、スウェーデンウプサラ市の老人健康センター(介護予防)や特別養護老人ホームなどの調査を行った。わかったことは、スウェーデンは高齢化率がそれほど高くなく現状ではまだ社会保障制度に対して市民も不安を感じていない。特に若い世代は社会保障の仕組みを信じている。特養の生活について調査したが、日本と比べて個室中心であること、ICTの活用がみられたこと、とにかく居住者の生活が質素であることが分かった。それ以外の点では、例えば玄関は施錠されていたりと日本と大きな違いはなかった。介護予防拠点は、文化やヨガなどコミュニティセンター的であった。この点は日本のデイサービスとは異なる。ただし調査した事例は初めて指定管理者として委託したケースであるとのことであり、日本の方が運営の点では進んでいたと感じた。(3)被災地での取り組み:住まいと在宅医療・看護のサービスの連携が重要であると考えていたため、岩手県釜石市の平田運動公園及び岩手県遠野市の穀町にコミュニティケア型仮設住宅という、住宅と介護の拠点(デイサービス、診療所等)を併設したものを、各市に提案し実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、柏市の介護保険給付データ分析を集中的に行った。当初の計画では複数地区を平均的に進めることで比較し、分析を行う予定であったが、そこに至る前に柏市のデータ分析に相当の時間をかけた。これにより当初の計画から遅れがでたが、一方柏市の介護保険給付データをGIS上で分析した結果、要介護者の発生率は概ね9~12%に収まり、地域差があるわけではないことが分かった。そして本データ分析によれば、世帯類型が大きく影響していることが分かった。介護保険給付データは入手が困難であるが、世帯類型であれば地区ごとのものは国勢調査で分析することが可能である。次年度の研究すべき着眼点が明確になったことから、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては大きく次の3点である。(1)どうすれば要介護度が高くても(3~5)家で過ごすことができるのか、ケアマネージャーや訪問看護師等にヒアリングを行い。地域で暮らし続けるための要点を明らかにしていく。昨年度の研究の結果、柏市保健福祉部が全面協力をしてくれることになっている。(2)他地区についても介護保険給付データを手に入れて分析を進める。(3)諸外国での事例(特にアーバンビレッジ構想)などを参考にしつつ、高齢社会における住まいと医療・介護サービスが連携した地域空間モデルを開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)当該年度に残した物品費は、次年度当初に予定通り執行する。昨年度PCを購入予定であったが、分析の途中で交換するわけにもいかず執行が延びていた。当該年度の物品も予定通り購入する。(2)旅費としては、本年度も海外の先進調査を行う。(3)人件費としては、昨年度未使用分を合わせて、GIS分析等のアルバイト代として利用する。(4)その他、分析に必要なデータや文献等を購入する費用とし使用する。
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