これまでにある地縁型地域において通所施設と互助の場の役割分担の実態から高齢者の地域居住をサポートする施設や場の機能システムモデルを提示した。本研究では、1)前回対象者の介護度進行による施設の役割の経時変化と2)複数拠点化による施設群の利用圏と役割の分担を明らかにし、それらの視点を加えて同モデルを改良する。 まず目的1)のため前回調査対象者について施設利用日における施設内行動観察調査、施設利用日以外の互助の場での行動観察調査調査を行った。調査は2011年10月と11月、2012年7月の3期に行った。これをもとに2012年には前回対象者の地域居住サポート環境モデルを再作成しその時系列比較を行った。その結果、前回対象者の4年後の経時変化として死亡の他に施設入居、利用施設変更といった環境移行がみられた。施設入居や利用施設変更等の環境移行に伴い、互助の場の生活上の重要性が減る例がみられた。環境移行における転機の存在があり、その転機には主体的又は環境的要因がある。独立的かつ自発的な地域互助には限界もあるため、これらを有効活用するためにケアマネージャーなどによるサポートが必要である。これにより転機への対応も可能となる。 次に目的2)のため2011年11月に行ったS施設へのアンケート調査をもとに考察した結果、施設数が増えるごとに利用圏域が縮小したが、最も近くではない施設を利用する選択的利用者も数名存在した。つまりショートステイ利用者はその機能をもつ施設を利用するなど施設間の機能的役割分担がみられた。 最後に以上の考察結果も交えて対象地域の地域居住サポート環境モデルを改良した。T町に住み続けることを可能としている要素として、様々な互助があること、共在の場の形成と変化、各高齢者のサポートネットワークのコーディネート、対象地域の市街地は日常的な生活範囲であり徒歩圏域内であることが挙げられる。
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