本研究は、近代都市計画と観光施策に基づく都市形成が急速に進んだ大正・昭和初期において、「観光」を都市戦略として掲げ、景勝地開発に取り組んだ都市を対象として、その開発構想ならびに都市基盤整備の具体的内容とその経緯を明らかにすることを目的としている。 平成26年度中には、堺大濱の海浜リゾート地ならびに大津の湖岸を中心とする都市空間を対象として研究を進めた。前者については、「近代の堺大濱における海浜リゾートの形成過程」と題して、土木学会論文集D2に刊行が予定されている。明らかにした内容は以下の通りである。 堺大濱では、明治半ば以降、堺市および阪堺電気軌道株式会社による公園地経営が進められてきた。本研究では文献資料をもとに、これらの主体による堺市大濱公園の管理と経営の変遷、さらにはそれによって作り出された海浜リゾート空間の形成過程を明らかにした。具体的には、堺市による官有地を借り受けての遊園地としての経営、内国勧業博覧会を契機とする施設整備の充実、堺市の財源不足と鉄道会社間の競合関係を背景とする阪堺電気軌道の公園経営への参画、市と阪堺電気軌道の考えの相違による契約解消、などの大濱における公園地経営の経緯を明らかにし、海浜リゾートとしての空間形成の実態を明らかにした。 さらに、大津の湖岸の都市形成史についても、その研究成果の一部は平成27年度中に論文として発表の予定である。
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