本研究は、特定テーマを超えて地域空間の総合的課題を扱う地域型NPOを対象に、地域空間のマネジメントを「見える化」することで、縮減時代における地域空間マネジメントの新たな計画理論を構築することを目的としている。平成25年度は以下を実施した。 1)地域型NPOの事例として、大阪府堺市東区を中心に活動するさかいヒルフロントフォーラムを対象に継続的な参与観察を行った。 2)地域空間マネジメントの見える化に関する調査として、景観まちづくりを基点とした地域空間マネジメントに取り組んでいる千葉県浦安市・うらやす景観まちづくりフォーラムなどのまちづくり団体の活動プロセスの記述を昨年度に引き続き実施した。 3)先進事例調査として、秋田県三種町、福島県二本松市、和歌山県紀美野町、広島県尾道市のNPOへインタビューを行った。各NPOが主題としている移住者支援、地域の作業づくり、空き家再生といった特定テーマを入り口としつつ、地域型NPOとして生活問題全般を扱う領域に活動を広げていることを確認した。 4)井庭(慶応大学)らとの議論により、地域空間マネジメントの見える化の手法として、パタンランゲージの可能性を改めて知ることができた。井庭は、C.Alexanderのパタンランゲージを用いて、学習・プレゼンテーション・コラボレーションといった「人々の行為」を記述し、人々に共有可能にするワークショップ手法を開発している。かつてパタンランゲージは「空間の質」を記述し、専門家・非専門家を架橋するツールとして開発されたが、近年は実践知を共通言語化する方法として他分野で再評価されている。これらは地域空間マネジメントの見える化にも応用可能である。現在、上記、1)、2)の成果をパタンランゲージを用いた記述により、とりまとめており、平成25年夏には出版できる予定である。
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