研究課題/領域番号 |
23760588
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
川澄 厚志 東洋大学, 国際地域学部, 助教 (00553794)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 都市計画・建築計画 / コミュニティ開発 / 住環境整備 / 小規模住民組織 / 都市貧困層 |
研究概要 |
本研究の目的は、CODI支援の住環境整備事業に参加しているタイの都市貧困層コミュニティの内部で組織化されている小規模住民組織を対象に、コミュニティ内の小規模住民組織が住民の内発的なニーズによって選択的に環境が整備できる実践的な開発手法であることを、事例間の比較を通して計画論的視点から分析・評価し、コミュニティ開発の方法論として構築することである。これは、地域コミュニティを自立的に持続可能な発展をさせるための開発手法として、アジアのコミュニティ開発の発展に資することを最終的な目標としている。初年度である平成23年度は、これまでの現地調査から得られたデータの整理及び分析を行うとともに、2011年9月と2012年3月にタイのバンコクで現地調査を実施した。平成23年度に得られた主な成果として、バンコクのボンガイ地区とソンクラー県のガオセン地区の小規模住民組織を単位とした開発手法は、小規模住民組織の活動内容からみてそれぞれ次の二つ、「均等型」と「不均等包括型」に分けられる。まず「均等型」として示したボンガイ地区は、もともとコミュニティ活動が活発であったが、火災からの早期の復興が統一したテーマとなり、地区を区分して住民の小規模な組織化を行い、貯蓄活動や建設支援等に関しての意思疎通を図り、相互の競争的な意識化を図ることで、結果として集団的な住宅建設事業等の円滑な進行が可能となった。一方、「不均等包括型」のガオセン地区は、宗教の相違や生業による生活スタイルが混在しており、当初から改善型の開発整備を目的としていた。このため地区の社会構造、地域特性を維持しつつ、区分された小規模住民組織とブロックに個別の状況を包含することで、可能な事業を選択的に実行している。従って各組織内、ブロック内では個別の住宅建設や改善など開発の内容や基準について相違が認められ、中には途上の事業もみられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、マイクロクレジットを実施している都市貧困層コミュニティにおける自立型開発(関係団体の支援のもとに住民が自ら主導する開発)の展開事例の収集とその類型化をおこない、モデルとなるコミュニティを選出する必要があるが、これらの展開事例は、すでに申請者がこれまで継続的な現地調査を実施しているバンコク都のボンガイ地区、ルアム・サーマッキー地区、ガオ・パッタナー地区、チャルーチャイ・ニミットマイ地区、クロントゥーイ7-12地区、クローン・ラムヌン地区、ソンクラー県のガオセン地区、ウタラディット県のブン・クーク地区、ラヨーン県のレーム・ルンルアン地区、の計9地区を調査対象地域として選定している。平成23年度はボンガイ地区を中心として、次の(1)から(7)を進めた。(1)展開事例の特徴を整理し、小規模住民組織を組織化するに至った経緯、理由を明らかにする。(2)住環境整備事業とコミュニティ活動へ参加した住民の経済・社会属性を明らかにする。(3)展開事例における小規模住民組織の組織化の目的と方法を明らかにする。(4)小規模住民組織を単位としたコミュニティ開発における計画立案段階から評価段階までの一連の開発プロセスを分析する。(5) (1)~(4)の調査をもとに、小規模住民組織を単位としたコミュニティ開発の特性及びその位置づけを考察する。(6)小規模住民組織からコミュニティ全体、さらには外部関係者間との関係性について明らかにし、ガバナンスについて分析する。(7)展開事例間の小規模住民組織の形態や特性の比較を通して、計画論的視点から、その効率性と持続性について分析評価し、今後の展開について追究する。上記は、過去に得たデータと現地調査で収集した資料(タイ語)から随時分析を進めていくものとする。
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今後の研究の推進方策 |
上述の現地での調査、資料収集の継続が必要な展開事例において研究調査を継続・発展させる。平成24年度は、バンコクのルアム・サーマッキー地区、ガオ・パッタナー地区、ソンクラー県のガオセン地区を中心に調査していく。また、パキスタン、インドネシア、バングラデシュの先行研究との比較し、最終的にはアジアのコミュニティ開発に資する新たな開発手法として、今後の都市域の持続的な発展を考慮しつつ、自立的な地域コミュニティの形成をさせるための方法論を構築していく予定である。アジア地域において発展に向けた研究を行い、その成果がパイロットスケールで実践されることにより、将来大規模な自立型開発が起こる道筋を示すことができる。また、調査研究で得た知見や分析結果を書籍、学術論文等の刊行物とすること、国内外の学会や研究会等での報告すること、ホームページを作成し情報発信していくこと、により日本のまちづくり、開発援助やNGO活動等の活性化につながる情報が提供できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は海外での現地調査を通して成果を挙げることを目的としているので、全研究費の中に占める旅費交通費の割合が高くなっており、申請者の渡航費用が全体の約50%となる。この費用の年度ごとの総額については、継続的な活動を行うために恒常的な確保を図りたい。謝金は、現地調査から収集した資料の整理、調査先との連絡などで必要となる経費として計上している。ソンクラー県など地方へ行く場合、現地においてタイ人の通訳を雇用する。その理由は、申請者はすでにタイで調査を遂行するために必要なタイ語を習得しているが、地方では発音や語彙まで違う場合があるためネイティブが必要になってくる。車両借り上げ代についても、地方の場合、交通手段を見つけるのが困難であること、治安が不安定であること、等の理由から経費として計上している。
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