研究課題/領域番号 |
23760588
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
川澄 厚志 東洋大学, 国際地域学部, 講師 (00553794)
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キーワード | 都市計画 / コミュニティ開発 / 住環境整備 / 小規模住民組織 / 都市貧困層 / 自立性 / 持続可能性 |
研究概要 |
本研究の目的は、コミュニティ内の小規模住民組織が住民の内発的なニーズによって選択的に住環境が整備できる実践的な開発手法であることを、事例間の比較を通して、計画論的視点から分析・評価し、コミュニティ開発の方法論のひとつとして構築することである。これは地域コミュニティを自立的に持続可能な発展をさせるための開発手法として、とりわけアジアのコミュニティ開発の発展に資することを最終目標としている。 平成25年度は、①2013年8月、②2013年11月、③2014年3月に現地調査を実施している。①は、本研究で調査対象としているバンコクの事例(ボンガイ地区、スアンプルー地区)に加えて、パイロットプロジェクトの成果と開発プロセスを明らかにするために、アユタヤ県やパンガー県で実施されたBaan Mankong Program(BMP)の事例についても調査した。②は、東京工業大学大学院社会理工学研究科社会工学専攻の土肥真人研究室との共同調査により、クロントイ地区やスアンプルー地区における開発の歴史的背景を明らかにするとともに、バーン・イーカン地区の都市貧困層コミュニティの空間・社会構造について調査した。③は、スアンプルー地区における開発プロセスを明らかにするとともに、開発後の生活環境について、同地区の協同組合のスタッフに対する聞き取り調査を行った。 これまでに実施してきた現地調査で得られたデータの整理及び、分析を行うとともに、現在、BMPにおける開発プロセスについて、日本都市計画学会などの学術論文として取り纏めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画(平成23年度交付申請書)を参考にすると、平成25年度の研究計画は、タイ全国で2003年度に実施されたBMPの10パイロットプロジェクトの9つの調査対象地域に加え、バンコク都サートーン区のスアンプルー地区でも、開発後のコミュニティの生活環境を把握するための現地調査を実施している。平成23年度、平成24年度に得られた結果をもとに、研究の目的「(7)展開事例間における小規模住民組織を通したコミュニティ開発の比較を通して、計画論的視点から、その有効性と持続可能性について分析・評価し、今後の展開について追究する。」としている。追加の調査が必要な展開事例においては、2013年8月と11月、2014年3月に現地調査を実施した。現在、小規模住民組織の有効性及び、都市貧困層向けのコミュニティ開発プロセスについて、平成26年度の達成目標に向けて分析・評価を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
補完調査、資料収集の必要な展開事例において現地調査を継続させる。平成26年度は、最終年度として本研究の目標を達成していく。現地での補完調査に加え、パキスタン、インドネシア、バングラデシュなどの先行研究と比較により、最終的にはアジアのコミュニティ開発に資する新たな開発手法として、今後の都市域の持続的な発展を考慮しつつ、自立的な地域コミュニティの形成をするための方法論を構築する。 本研究の成果は関連の学会や現地の政府機関で発表していく予定である。その成果がパイロットスケールで実践されることにより、将来大規模な自立型のコミュニティ開発が起こる道筋を示すことができると考えている。また、調査研究で得た知見や分析結果を書籍、学術論文などの刊行物とすること、国内外の学会や研究会などで報告することによりアジアのまちづくり、開発援助やNGO活動などに一助につながると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年3月に実施した現地調査は、平成25年度の執行額に計上されている。 この現地調査の中の業務委託費(現地コーディネート代)については、次年度執行になる予定である。その理由としては、出張期間が年度末に実施したために領収証などの書類の提出を勘案したためである。 本研究はタイでの現地調査を通して成果をあげることを目的としているので、全研究費の中に占める旅費交通費の割合が高くなっている。また、現地調査において、その必要に応じて、通訳(タイ語⇔英語)や車両借り上げの業務委託を考えている。その理由については、研究代表者はすでにタイで調査を遂行していく際に必要なタイ語は習得しているが、南部地域など地方の調査対象地域では、発音や語彙が異なる場合があるためネイティブスピーカーが必要になってくる。車両借り上げについては、地方の場合、公共交通手段をみつけるのが困難であること、治安が不安定であること、などの理由から経費として計上している。
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