本研究の対象は、タイの都市貧困政策で2003年から段階的に実施したCODI(Community Organizations Development Institute)のBMP(Baan Mankong Program)10パイロットプロジェクト(バンコク都、ソンクラー県などで実施)における都市貧困層コミュニティである。本研究の目的は、コミュニティ内の小規模な住民組織を単位とするボトムアップ型の手法について、これらが住民の内発的なニーズによって選択的に環境が整備できる実践的な開発手法であることを、事例間の比較を通して計画論的視点から分析・評価し、コミュニティ開発の方法論として構築する。これは、地域コミュニティを自立的に持続可能な発展をさせるための開発手法として、アジアのコミュニティ開発の発展に資することを最終的な目標としている。 最終年度の平成26年度は、2014年8月にタイ・バンコクで補完調査を実施した。また、前年度までに収集した各対象コミュニティにおける住民の経済的・社会属性、小規模住民組織化の目的と方法、開発プロセスなどの定性データを分析し、住民の内発的なニーズによって選択的に環境が整備できる実践的な開発手法であるかどうかを確認する作業を行った。 研究期間全体を通じて実施した研究の最も重要な成果として考えていることは、小規模住民組織を通したコミュニティ開発手法は、コミュニティの社会構造や地域特性を維持しつつ、区分された小規模住民組織に個別の状況を包含することで、可能な事業を選択的に実行している。従って各組織内では個別の住宅建設や改善など開発の内容や基準について相違が認められ個別の事情を組み込んだ開発を可能としていることを明らかにした点である。つまり、小規模住民組織を単位としたコミュニティ開発手法は、まちづくり等における住民の合意形成において有用であると考えられる。
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