研究課題/領域番号 |
23760595
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山口 健太郎 近畿大学, 建築学部, 准教授 (60445046)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 高齢者向け住宅 / ケアハウス |
研究概要 |
本年度は、ケアハウスを調査対象とし自立と要介護高齢者が共同居住する中で必要な介護、生活支援の具体的な内容、そして、適切な職員配置と建物規模について明らかにするために、1)サービス内容が異なる7つのケアハウスに対するヒアリング調査、2)ケアハウスと高齢者専用賃貸住宅(以下、高専賃)での行動観察調査を実施した。 調査1では、食事と生活支援のみの一般型、24時間体制の見守りが併設した外部サービス型、24時間の見守りと軽微な介護が併設した軽費老人ホームA型、24時間の介護が併設した特定施設型の比較調査を実施した。その結果、一般型では認知症症状が見られるようになると特別養護老人ホームなどへの転居が早期に促される。外部サービス型では、認知症高齢者への対応も可能であるが、常駐職員と外部職員の業務分担が不明瞭となり常駐職員への負担が大きくなることが指摘された。軽費老人ホームA型では、スタッフ配置の面ではターミナル直前の状態まで対応することが可能であるが、居住費を徴収していないために老朽化した建物の修繕が行えず生活に不便さが生じていた。そして、特定施設型では、ターミナルまでの対応が可能である一方、特別養護老人ホームとの違いがなく、生活も受動的になっていることが明らかとなった。 調査2では、朝昼晩の食事がついている一般型ケアハウス1施設と、食事が選択性になっている高専賃1住棟において各3日間の行動観察調査を実施した。行動観察調査は共用部のみとし9から19時の間、10分ごとに利用者の姿勢、行為、居場所の採取を行った。その結果、高専賃では、食事サービスが完全には内包していないために入居者の外出が頻繁にあり、外出時には玄関付近に設置されているソファコーナーや食堂において居住者同士の会話が生じていた。その一方、ケアハウスでは、外出する機会や会話のきっかけがなく、居室内に生活する時間が長くなっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的である、自立と要介護高齢者が共同生活する際に必要な介護・生活支援の実態と職員配置については、7施設のケアハウスに対してヒアリング調査から、日中における生活支援サービスのみではターミナルまでの対応が困難であり、夜間にも常駐する仕組みが必要であることを把握した。生活支援サービスと介護サービスの併設方法については、研究計画当初は有効と想定していた外部サービス型の普及率が極めて低く、調査が1事例しか実施できなかった。しかし、運営上の問題点が複数あることがわかり、外部サービス型以外のサービス形態についても調査する必要性を把握できた。 高齢者向け住宅の建物面については食堂・玄関・フロントの位置関係が重要であるとともに、外出する機会をつくりだす行為が重要であることを把握できた。特に、食事サービスが3食ともに併設されていると受動的な生活となり、外出やコミュニケーションのきっかけが失われることを明らかにした。 本年度は、研究1年目であったが上記のような成果が得られ、おおむね計画通りに進んでいると言える。来年度は、これらの研究のサンプル数を増やし、より客観的なデータが得られるようにしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
上記にも示した通り、次年度は本年度と同様の調査を実施し、より客観的で一般的な解を得られるようにしたい。 具体的には調査1)のサービス内容についてのヒアリング調査では、小規模多機能型居宅介護や24時間訪問介護など夜間にも対応した外部サービスの有効性について検討していきたい。 調査2)の高齢者向け住宅における建築計画上の検討としては、現在1施設ずつで実施しているケアハウスと高齢者向け住宅の行動観察調査を2施設ずつに増やし、より客観的なデータ得られるようにしたい。さらに、高齢者向け住宅については、玄関、食堂、その他の共用空間の位置関係が異なる複数の施設において行動観察調査を実施し、空間構成の違いが居住者同士のコミュニケーションに与える影響について検討していきたい。 また、次年度は4年計画の3年目、4年目に実施予定であった高齢者向け住宅のサービスに互助機能を組み入れるプロセスについての研究を本格的に実施していきたいと考えている。本年度も自治体活動が盛んな公営住宅や、互助活動が盛んな分譲賃貸住宅でのヒアリング調査を実施しており、これらの活動に対して継続的なコンタクトを取っていくとともに、活動をデータ化できる手法について検討していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度と同様に次年度の研究費についても大半は、フィールドワークに必要な旅費等が占める。 調査1)では先進的な試みを展開している事例に対してのヒアリング調査を実施していきたいと考えている。 調査2)の行動観察調査では同時に複数人の調査員が必要となることから、謝金等によって調査員を募集し、調査を実施してきたいと考えている。
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