研究課題/領域番号 |
23760595
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山口 健太郎 近畿大学, 建築学部, 准教授 (60445046)
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キーワード | 高齢者向け住宅 / 互助組織 / 自治活動 / ワークショップ / 見守り / 地域包括ケア |
研究概要 |
高齢者向け住宅における互助活動を活性化していくためには、住民相互の関係性を醸成していく「出来事」や「場所」が必要となる。本年度は、高齢化が進み高齢者向け住宅と同じ問題を抱える公営住宅におけるコミュニティ活動の実態調査を実施した。本調査対象施設の特徴は、住民の自治機能だけに依存するのではなく、行政、地域包括支援センター、介護事業所といった地域機能が連携しコミュニティ活動を推進している点にある。具体的な活動は、月1回のサークル活動、独居高齢者に対する見守り活動、認知症に対する研修やまちづくりイベント等である。調査方法は、関係者に対するヒアリング調査や現地における記録調査であり、これらの活動を詳細に記録することを目的とする。 その結果、1)コミュニティ活動の推進は、中立的な立場である行政からの働きかけと補助金等の資金援助が重要であり、これらの支援により初期活動が円滑に行われていた。2)地域包括支援センターや介護事業所は健康体操や各種のレクリエーション活動に対する経験が豊富であり継続的な会を維持していくことに大きな貢献を果たしていた。3)各種のボランティアサークルを招くことにより経済的に多様な活動を取り込むことができていた。4)見守り活動を行うことにより住民相互の関心と理解が深まっていた。5)高齢者の自治活動には継続的な外部からの支援が必要である。ということが明らかとなった。 本研究の結果から住民によるコミュニティ活動は引きこもりの防止や、住民同士の理解にはつながっていたが、助け合い活動までは進展していなかった。会の継続についても外部からの支援による部分が多く、完全に自主的に運営してくことは困難であることが分かった。また、本研究ではこれらの活動を詳細に表現し、第三者にも理解しやすい資料の作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4年間の継続研究の3年目に該当する。研究目的は2つあり、1つ目の要介護状態になっても住み続けることができる生活支援サービスについては、1年目、2年目に実証研究を行い調査を終えている。調査結果についても査読付き論文2本の採用通知を得ており、おおむね順調に進んでいると考えている。 2つ目の目的である自助・互助・共助の組み合わせによるサービスの分担については3年目から取り掛かり、有用な調査結果が得られている。3年目の調査については次年度も継続して行う予定であり、コミュニティ活動の始動期から成熟期についての結果を得たいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は4年間の最終年度となるため設定している2つの課題について、再度見直し必要な調査を実施してきたいと考えている。 1つめの課題については、1年目に食事提供の有無が利用者の会話や日常生活の活性化に影響を及ぼすことを明らかにしたが、次年度は、利用者の運動機能や生活展開の側面から食事の有無について検討していきたい。 2つめの課題については昨年度の研究を継続して実施することにより、長期間にわたる調査データの収集に努めたいと考えている。
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