研究課題/領域番号 |
23760596
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研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
長 聡子 新潟工科大学, 工学部, 准教授 (70523653)
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キーワード | 都市計画 / 河川 / 公共空間 |
研究概要 |
本研究では河川空間を対象に、河川を軸とした都市デザインのあり方を「感性価値」の観点から提案することを目的としている。本年度は利用者の視点から快適な河川敷地の空間デザインを追究すべく、河川敷地に立地するオープンカフェを対象に現地実測調査およびヒアリング調査を実施した。具体的には、河川敷のオープンカフェの先駆的事例として歴史のある広島市中心部の元安川と京橋川の河口付近の河川敷地に立地するオープンカフェを対象に、①オープンカフェの利用状況、②河川敷地断面形状と利用者意識の関係、③景観の印象評価、④オープンカフェの視認性について明らかにした。 ①オープンカフェの利用状況:広島市の3店舗を対象に1週間にわたって、オープンカフェの利用状況を観察・スケッチ調査によって整理した。その分析結果より、利用されやすいオープンカフェ装置の配置として、流軸方向に対して水平・垂直方向ともにランダムに配置することであることが分かった。 ②河川敷地断面形状と利用者意識の関係:河川の水面までの距離が長いときは利用者は親水性を感じにくいため、オープンカフェ装置は河川際から離して配置した方が景観を楽しむことができ、一方、河川の水面までの距離が短いときはオープンカフェ装置は河川際に配置した方が親水性を享受することができる。 ③景観の印象評価:日中は河川やその背後に広がる自然、人工物を景観として認識し、楽しむことができるが、夜間はライトアップ等の工夫を施したオープンカフェのみ景観の評価が得られた。 ④オープンカフェの視認性:集視率(視野全体に占めるオープンカフェ構成要素の立体角の割合)を指標に、オープンカフェの対岸や橋上からの視認性を比較し、橋袂での視認性の重要性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の主題である河川と連携した都市デザインを追究すべく、河川敷地に立地するオープンカフェを対象に、利用者の感性を刺激する空間デザインについて分析を行った。当初予定していた河川と連携する都市デザインの特徴の整理を、代表1都市(広島市)について実施することができたが、他の特徴を持つ都市について調査・分析することが時間配分上できなかったため、「やや遅れている」と評価した。なお既に申請した通り、補助事業期間を若干延長して、当初予定した研究実施計画を遂行することとする。 また、今年度までの研究成果の社会還元として、日本建築学会大会(9月)、新潟市で開催されたシンポジウム(10月)、国際学会AURG(1月)、都市計画学会東北支部研究発表会(3月)で研究発表・情報提供を行った。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究の総括として、昨年度達成できなかった河川と連携する都市デザインの特徴に関する事例調査を完了させ、河川を軸とした感性価値を最大化する都市デザインモデルの提案を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
補助事業実施期間中に所属機関を移動した関係で、研究の進行や調査対象地の変更に予定外の時間を要したため、当初予定していた河川での現地調査に未着手の部分が発生し、次年度使用額が生じた。 河川での現地測量調査およびヒアリング調査を実施するための旅費として残額を使用予定である。
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