研究課題/領域番号 |
23760602
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野村 俊一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40360193)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 禅院建築 / 鎌倉 / 東アジア / 意匠 / 流通 |
研究概要 |
本年度は、研究期間中に東日本大震災が生じたため、しばらく研究が頓挫してしまった。そして、研究調査先に福島県の重要文化財が含まれていたため、計画の変更を余儀なくされた。以上の事態をふまえ、研究テーマと目的に照らし合わせたうえで、急遽、調査対象に韓国の歴史的建造物を追加した。その結果、鎌倉期禅院建築の意匠とその流通をめぐって、ひろく東アジアのなかで検討するという目的の一つを達成しつつある。 韓国の調査では、同国に位置する木造建築――鳳停寺、開目寺、銀海寺、通度寺、観龍寺、海印寺、法住寺、長谷寺、定林寺跡、金剛寺跡、高山寺、修徳寺、開心寺、華城、傳燈寺――を対象に、「鎌倉期禅院建築の意匠とその流通に関する対外交渉史的研究」にかかわる意匠・形式・彩色の実地調査を行った。具体的には、軒下に見る組物や琵琶板、台輪や頭貫といった細部に着目し、それらの形態や彩色、描かれた文様などについて確認した。くわえて、文化財建造物の修理技術者から、建材の経年変化や劣化をもふまえた意匠の分析を行った。 その結果、韓国の木造建築にみる彩色の意味と技法、組物の形態やその配置ルール、架構の構造とその規則性などについて、中国と日本の事例との比較をもふまえながら、より詳細に実態の把握をすることが可能となった。また、現地における使用者へのヒヤリングや史資料を介して、韓国の木造建築の具体的な意匠や機能に関する情報を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間中に東日本大震災が生じたため、しばらく研究が頓挫した。また、研究調査先に福島県の重要文化財が含まれていたため、計画の変更を余儀なくされた。以上の事態をふまえ、研究テーマと目的に照らし合わせることで、急遽、調査対象に韓国の歴史的建造物を追加した。その結果、鎌倉期禅院建築の意匠とその流通をめぐって、ひろく東アジアのなかで検討するという目的の一つを達成しつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、現在手持ちの情報として不足している中国浙江省と河北省とにおける建造物の追加調査を予定している。くわえて、日本の西国(兵庫、大阪、京都、和歌山)および東国(おもに神奈川・東京・埼玉)とに所在する建造物の調査を実施する。双方の調査先では、「鎌倉期禅院建築の意匠とその流通に関する対外交渉史的研究」にかかわる意匠・形式・彩色の実地調査を予定している。あわせて、文献史料と絵図とを利用し、おもに円爾と無学祖元という鎌倉期を生きた禅僧の行状に焦点をあてることで、造営関係者の検討をすすめる予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
調査対象が刊行している寺誌類や禅宗寺院関係図書、中国建築史図書を入手することにくわえ、現地調査(調査スケジュールは8 月および9 月に一週間程度の期間、計2~3 回/1 年調査。日本での調査1~2 回、中国での調査1回/1 年)のための旅費や、調査協力者への謝金、調査記録用カメラレンズの購入を予定している。なお、次年度使用額は、東日本大震災の影響から当初計画していた国内での実地調査を次年度に延期することで生じたものであり、延期した調査費用に必要な経費として平成二四年度請求額と合わせて使用する予定である。
|