研究課題/領域番号 |
23760602
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野村 俊一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40360193)
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キーワード | 禅院建築 / 鎌倉 / 東アジア / 意匠 / 流通 |
研究概要 |
本年度は、東日本大震災による研究遅延を取り戻すべく、研究テーマと目的に照らし合わせたうえで、まず関連する史資料や既往研究書の収集・読解に努めた。平行して、福島県会津若松市内に所在する禅宗様建築の調査をすすめた。これらの作業および別途行った中国における木造建築の調査結果をもとに、鎌倉期禅院建築の意匠とその流通をめぐって、とくに建築の平面・架構・天井に限定することで、東アジアにおける流通プロセスの一端について検討した。 福島県会津若松市の調査では、同市に位置する鎌倉期・室町期造営の木造建築――八葉寺阿弥陀堂、勝常寺薬師堂、延命寺地蔵堂、福生寺観音堂、円満寺観音堂、勝福寺観音堂――を対象に、「鎌倉期禅院建築の意匠とその流通に関する対外交渉史的研究」にかかわる意匠・形式・架構法と平面形式の実地調査を行った。具体的には、軒下に見る組物や琵琶板、台輪や頭貫といった細部に着目し、それらの形態や彩色、描かれた文様などについて確認した。くわえて、文化財建造物の修理技術者から、建材の経年変化や劣化をもふまえた意匠の分析を行った。 その結果、東国、とくに北関東から東北南部の木造建築にみる彩色の意味と技法、組物の形態やその配置ルール、架構の構造とその規則性などについて、中国の事例との比較をもふまえながら、より詳細に実態の把握をすることが可能となった。また、現地における使用者へのヒヤリングや史資料を介して、この地域における木造建築の具体的な意匠や機能に関する情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災のため研究に遅延が生じていたが、その遅れを取り戻すべく、研究テーマと目的に照らし合わせることで、福島県会津若松市における建造物の基礎的調査を遂行することが出来た。また、別途行った中国における木造建築の調査結果もふまえながら、鎌倉期禅院建築の意匠とその流通をめぐって、ひろく東アジアのなかで検討するという目的の一つを達成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、現在手持ちの情報として不足している中国浙江省における建造物の追加調査を予定している。くわえて、日本の西国(兵庫、大阪、京都、和歌山)に所在する建造物の調査を実施する。双方の調査先では、「鎌倉期禅院建築の意匠とその流通に関する対外交渉史的研究」にかかわる意匠・形式・彩色の実地調査を予定している。あわせて、文献史料と絵図とを利用し、造営関係者の検討をすすめる予定である。上記には一部に平成24年度に実施予定だったものの遅延してしまっているものも含まれるので、次年度において速やかに実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査対象が刊行している寺誌類や禅宗寺院関係図書、中国建築史図書を入手することにくわえ、現地調査のための旅費や、調査協力者への謝金、調査記録用三脚の購入を予定している。
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